好き。愛してる。これは好意の思いを伝えるには簡単すぎる言葉ではないだろうか。それに、この言葉はなんだか軽いもののように思える。

「シャーク、今から好きって言ったら駄目」
「……はぁ」

 愛の言葉以外で伝える愛。それが遊馬には思い付かず、頭の良い凌牙に遠回しで頼んだ。凌牙は突然の強制に眉をひそめたが、いつものことだと割り切って遊馬の話に乗った。

「じゃあシャーク、俺の事どう思ってる?」
「愛してる」
「あー……ごめん。愛してるも駄目。好きと愛してるって言ったら駄目」
「面倒くせえな」
「もう一回。シャークは俺の事どう思ってる?」

 好きも愛してるも駄目。それ以外の言葉を探し始めた凌牙を、遊馬はじっと見つめた。それは凌牙ならどう答えるかといった期待もあったが、単純に凌牙は自分のことをどう思っているのか知りたいという気持ちもあった。
 少し胸を高鳴らせて待っていると、凌牙が少しずつ口を開いた。

「最初は、すごくウゼェって思ってた。あんなヘボい腕でデュエルチャンピオンを目指してるなんてほざいてて、舐めてんのかって。すっげえイラついた。そんなお前に負けたことも」
「そ、そんな言い方あるかよ!?」
「五月蝿い。最後まで聞け」

 凌牙の口から出た言葉に驚いて顔を近づけると、ぐいっと額を押されて離されてしまった。自分を鬱陶しそうにする態度に少し胸が痛んだ。
 そんな遊馬の様子は視界に入っていないのか、凌牙は気にすることなく自分のペースで話を進める。

「デュエルの腕は最悪だが、お前はこんな俺に真っ当から向かってきた。デュエルでもそうだが……」
「ん?」

 宙を見ていた凌牙の目がふっと遊馬に向けられる。そして人差し指でそっと遊馬の胸の辺りを指した。凌牙の指を追うようにして遊馬も自分の胸元を見て、凌牙の顔を不思議そうに見た。

「お前は心でぶつかってくれた。それに、俺はお前に何度も救われた。カイトの時も、璃緒の時も。そして何より、お前は俺に前を見るように引っ張ってくれた」

 凌牙はふっと笑うと遊馬の頬を撫でた。その手は優しく、触れあった場所が熱を持ったかのように感じられた。

「ありがとう遊馬。お前は……太陽みたいなやつだな」

 それは好きや愛してるよりももっと深く重いもののように感じ、遊馬の胸にじんわりと染み込んでいった。

「お前……よくそんな恥ずかしい事言えるな……」
「あ?言えって言ったのはお前だろ?」



13/04/08
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