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カナリアは何処へ行ったの

「「嫁に逃げられたァ!?」」

青峰と黄瀬が大笑いしている。普段の赤司ならここで馬鹿二人を黙らせることくらい造作もないことなのだが、今の赤司はみやびのことで頭がいっぱいらしくそれどころではない様子だった。

「ていうかオレ赤司っちが結婚してたの知らなかったっス」
「あ、オレも」
「峰ちんと黄瀬ちん以外はみんな知ってるよー?」

自分たち以外は知っていたことにさすがの二人もショックを受けたらしい。信頼と信用の違いを定義するのは難しいがこの二人を見ているとよく分かる。信頼はされているが信用はされていないのだろう。オレもいずれ結婚するだろうがコイツらだけには紹介したくないと思った。

「オレら以外はみんな知ってるってどういうことっスか!?」
「え、つーかお前ら知らなかったのかよ」
「火神っちも知ってたのにオレら知らなかったとかイジメ!?」

わっとテーブルに突っ伏して黄瀬が泣き出す。面倒だったので黄瀬はそのままに話を元に戻すことにした。

「みやびはいつ居なくなったのだよ」
「昨日……言い争いになってしまって」
「それでみやびさん、泣きながらマンションを飛び出して行ったんですね」

黒子の言葉に赤司の肩がぴくりと揺れる。先ほどからあまり口を開かないし無表情を装おっているから分かりにくいが動揺はしているらしい。それはそうだろう、何があったかは知らないがあれだけ大切にしていた嫁が家出したのだ。箱入り娘であるみやびが自力でどこそこ行けるとは考えにくいし、火神曰く連絡もつかないようだから何か事件に巻き込まれている可能性だってある。平常心を保てと言うのが無理な話だ。

「とりあえず早く探さないといけないのだよ」
「警察の力も借りたいところですがあまり大事にしない方がいいですよね。青峰くん、できますか?」
「おー、任せとけ。なんか写真とかあると助かるんだけど」
「……写真なんて、持ってない」

どんよりとした声で赤司がそう言った。先ほど赤司からかい摘まんで聞いてはいたがどうやら思っていた以上にすれ違いの生活が続いていたらしい。仕方がないので高尾に連絡して高尾妹からみやびの写真を送ってもらう。それをその場にいた全員に見せると、ガタリと立ち上がった黄瀬が大声を上げた。

「オレ、この子昨日見たっス !」
「黄瀬くんにしては上出来ですね。どこで見たんですか?」
「駅の券売機で……」
「駅?」

どこそこ行っているわけがないと思っていたが電車に乗ったとなるといろんな選択肢が浮かんでくる。東京から出ているといろいろまずい。黄瀬が行き先を知っていれば話は別だが、

「ていうかあの子高校生だったっスよ?え、赤司っちの奥さんって女子高生なんスか!?」
「それはどうでもいい話なのだよ。みやびがどこに行ったか分かるか?」
「ああ、それなら……」

黄瀬の口から飛び出した地名はここからだとかなり遠い。本当にそんなところまで行ったのか。電車にも乗ったことがないであろうみやびが?一体何のために?

「……分かった。助かったよ、黄瀬」

オレたちにはよく分からなかったが赤司はそれだけで理解したらしい。テーブルの上に一万円札を置いた赤司はどこかに電話をかけながら足早に店から出ていった。

「みやびが自力で切符買って電車に乗ったとか考えにくいんだけど」
「あ、それは大丈夫っス!切符の買い方は教えてあげたし、乗り換え方が分からなかったら駅員さんに聞くように言ったから」
「「「…………」」」

赤司が知ったら殺されそうだ。そう思うオレたちの向かい側で紫原と青峰が赤司が置いていった金でご馳走になろうと追加注文していた。

title/水葬