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▼ 本命ですか、義理ですか?

バレンタイン前日の昨日はオレの誕生日だった。それを知った小堀からは誕生日プレゼント兼バレンタインだと一つ20円の例の小さなチョコレートをもらった。ちなみにたまたまポケットに入っていたという代物である。


「文句あるなら返してくれ」
「誰も文句は言ってないだろ。それにあれは先ほどおいしくいただいた」


つまり今年のバレンタインの収穫は野郎からのチョコレート一つだけなのである。この際市販のものでもチ○ルチョコでも何でもいいからオレにバレンタインの幸せをください女子の皆さん。
しかし非情にもクラスメイトの女子から渡されたチョコは黄瀬へのプレゼントだった。どうも彼女たちはオレを郵便局員だと勘違いしているらしい。


「ということで、だ。どうせお前らも収穫ゼロだろうし、ここに"義理でもいいからチョコレートをください同盟"を結成しようと思う。あとは早川あたりを加えれば完璧だろう」


ここでふと、正体不明の違和感を覚えた。いつもなら一番最初にツッコミを入れてくる笠松が大人しい。何気なく笠松に視線を向ければ気まずそうに視線を逸らされた。ついでに小堀も。


「みょうじセンパーイ!チョコおいしかったですあ(り)がとうございました!!」
「おー早川、どういたしましてー」
「何…だと」


もう一度笠松と小堀に視線を向けて確信した。コイツらみょうじからチョコもらってる。早川までもらってるようだがオレはもらってないぞ。みょうじとオレは同じクラスなのに一体これはどういうことだ。


「ひどいこれは立派な裏切り行為だ…!」
「お、おい森山!?」


裏切り者ー!なんて叫びながら体育館を飛び出す。途中両手にいっぱいチョコレートを抱えた黄瀬とすれ違ったのでわざとぶつかってやった。2、3個落ちていることを期待しよう。イケメン爆発しろ。






「森山ー!」


校門を出たところでみょうじに呼び止められる。どうやら走ってきたらしい。みょうじの左手で揺れる紙袋に一瞬期待したが、中身はどうやら友人たちからもらった友チョコのようだった。


「一人なら途中まで一緒に帰ろうよ!」
「…ああ」


まあチョコレートはもらえなかったけど女の子とこうやって二人で帰ることができるだなんてラッキーじゃないか。これもいいバレンタインの思い出になる。


「今年のバレンタインの収穫は?」
「小堀からチ○ルチョコを一つもらった」
「は?クラスの女子からもらってたじゃん」
「あれは黄瀬に渡してくれって頼まれて…」
「そうなの!?」


驚いたような声を出すみょうじに視線を向けると、みょうじは本当に驚いているらしくぽかーんと口をあけていた。そんなに驚くことだろうか。首を傾げるオレにみょうじは何か言いたそうに口を動かしたが、オレが聞き取る前に口を閉じてしまった。


「何だ、どうかしたのか?」
「何でもない」


何でもないと言うわりにみょうじはその場から一歩も動こうとしない。どうしたのだともう一度尋ねれば、みょうじは真っ赤な顔で早口に捲くし立てた。


「しっ、仕方ないなあ森山!ちょうど一つ余ってるからこれをあげよう!」
「えっ」
「よかったね、女の子からもらえて!神棚にでもかざって大事にしなさいよ!!」


オレに何かを押し付けるや否や、みょうじは来た道を走り去ってしまった。お前家そっちじゃないだろ。挙動不審なみょうじを慌てて追いかけると、意外にもみょうじはすぐに捕まった。


「な、なに…?」
「あのさ」


これって本命?それとも義理?
すでに答えは出ているようなものだったがこれだけはどうしても聞いておきたかったのだ。
みょうじの真っ赤な顔を見たら、バレンタインのチョコだけではなく期待だってしたくなってしまったのだから。

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