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▼ プロポーズ

※社会人設定










和成のことをハイスペックだとかおっしゃった方はどこのどなただろうか。いやたしかにコイツの社交性とかコミュ力とかは本当にハイスペックだと認めざるを得ないけれども。


「ぎゃあああ!ヤバイなまえ、目玉焼き焦げた!!」

「なまえー、オレの靴下って何番目の引き出しに入ってるんだっけ?」

「ちょ、皿洗ってたらいきなり割れたんだけど何で!?」


とりあえず私の知る和成はハイスペックからは程遠い、ダメダメな彼氏である。





「だーかーらー!何回言わせるの!」


ゴミはゴミ箱に捨てろ!そう怒鳴りながら足の踏み場もない部屋をぐるりと見渡す。最近忙しかったから和成の部屋を訪れるのは二週間ぶりだった。部屋がこんな惨状になっていると分かっていたら無理に時間を作ってでも掃除に来たのに。


「和成さー、自分で自分のことできないんだったら一人暮らしなんてせずに実家に戻りなよ。別に実家からでも不便じゃないでしょ?」


床に散らばるビールの空き缶やコンビニ弁当の空を分別しながら袋に入れていく。彼女だからって毎回毎回掃除させられるこちらの身にもなってほしい。私だってせっかくの休日は和成とイチャイチャしたりどこかに行ったりして楽しい時間を過ごしたいのに。一人暮らしだと親の目を気にしなくていいかも、とか思っていたけれどとんでもない。私は一人暮らしをしているだらしない息子が心配で毎週休みの日になると掃除に行く母親ポジションである。
ていうかいつも思うんだけどこの部屋、新卒の社会人が一人暮らしするには広すぎやしませんか?自分で掃除もできないくせに1LDKとかどうなの、一人暮らしなら1Kで十分でしょ。しかももう一つの部屋はあんまり入ったことないけどダブルベッドしか置いてないよね。別にあっちで寝起きしてるわけじゃないみたいだし、意味分かんない。


「なまえなまえ、オレホント、一人じゃ何もできないね」


洗濯すべきものなのかクローゼットに収納すべきものなのか。おそらく前者だろうがソファーに脱ぎ散らかされているワイシャツを踏みつけるように座っているジャージ姿の和成がにへらっと笑う。私は部屋を片付ける手を止めずにそうだね、と返した。


「だからね」


そう言って和成がソファーから立ち上がる。ジャージのズボンをごそごそと探った和成は、私の左手から空き缶が入ったビニール袋を取り上げた。


「オレと結婚してください」


珍しく、というより久々に見た和成の真面目な顔に体中が燃えるように熱くなる。突然のことに何も言えずエサを食べる鯉のように口をパクパクさせる私が和成の一人暮らしの理由を知るのは左手の薬指にはまった指輪に気付いてからのことだった。


(そりゃあ実家暮らしの方が何かと便利だけどさ?なまえに迷惑かけなくて済むし)

(でも先に二人で暮らす部屋見繕っとこーとか思ってたらなかなかいい物件に出くわしちゃって)

(さすがに就職する前にプロポースは早すぎるかなと思って、仕方ないからオレ一人で先に暮らしてたわけ)

(えっ、私こんなに汚い部屋に住むのヤダよ!?)

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