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  ハリポタパロ G

思わずきょろきょろと周囲を見回してしまったがどうやらこの場には僕と名前以外いないらしい。音を立てないように静かに近づいて、木にもたれ掛かって眠っている名前の隣にそっと腰を下ろした。
ああ、名前の寝顔はこんなにあどけないものだっただろうか。数年ぶりに見る名前の寝顔に心臓を鷲掴みにされるような感覚を覚えながらそっと手を伸ばす。


『お前は名前に触れる資格があるのか?』


頭の中で響いた咎めるような声にはっとして手を止める。そうだ、僕には名前に触れる資格なんてない。名前をこれだけ苦しめておいて謝りもせずに触れようとするなんて。そんなこと許されるはずがないのに。
行き場の失った手は誤魔化すように名前の膝の上に置いてあった本に向かった。題名を見て思わず眉を潜める。これは名前のような純血主義ではない人間が読むものではない。
どうして名前がこんなものを読んでいるのか。黄瀬のようなバカは気が付かないだろうが、 見る人が見れば名前が名字家の人間であるということも相まって純血主義だと勘違いされるかもしれないのに。
後で真太郎に言って注意させよう。そう思いながら適当なページを開くと、栞代わりになっていたらしい書きかけの手紙が出てきた。


―――お母さんへ
アップルパイ美味しかったです。ありがとうございました。
いつものように征くんとテツくんと三人で食べました。二人とも美味しかったと言っています。また作ってくださいね。


「……これは、」


名前の母親が手作りの菓子を定期的に名前に送っているということは、それをもらっている敦からよく聞いている。ホールケーキを丸ごと貰っただの何だの言っていたし、たまにお裾分けだと僕らも貰ったりもする。だけど名前とテツヤと三人で食べたことなど、ホグワーツに入学してから一度もないのに。
何なんだこの手紙は。知らない。分からない。だって僕は、


―――征くんとテツくんは、寮が違うのにいつも私を助けてくれます。二人ともとても優しいです。


僕は名前を傷付けてしかいないのに。
名前は両親に嘘を吐いている。それは、悲しい悲しい嘘だった。