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  三輪を幸せにしたい年上夢主

タイトル : 明日は晴れますか?





雨は嫌いだと秀次は言った。

そう言った秀次の顔は憎々しげで、だけどどこか悲しそうにも見えた。この場にいるのは私なのに私を見ていないような、そんな目をしていた。

私に天気を操る能力があればよかったのに。そうしたら秀次の大嫌いな雨なんて、降らせたりしないのに。





秀次は私にとって神様のような存在である。秀次がいたから今の私が存在するのだ。秀次がいなかったらたぶん私はボーダーをやめていた。
秀次は幸せになるべき人間だし、そのためなら何でもしてあげたい。秀次が私に燕の子安貝を持ってこいと言うならもちろん取りに行く。その過程で梯子から転げ落ちて死んでしまっても本望だ。秀次のために行動した結果生じた不運を、私が不満に思うはずがない。

「……おまえ気持ち悪いな」

二宮が心底ドン引きしたと言わんばかりの視線を向けてきた。秀次の話を振ってきたのはそっちじゃん。だから私は真面目に答えたのに喧嘩売ってんのかこいつ。

「おまえが秀次を甘やかすのは何故かと聞いたんだ。誰が秀次に対する想いの丈を語れと言った」
「え?違うの?」
「全然違うだろ」

二宮は呆れたようにそう言って、私の隣で黙々とパフェを口に運ぶ秀次に視線を向けた。あああ、甘いものを食べる秀次プライスレス……!食べるという当たり前の行為にどうしてここまでときめくことができるのだろう。ああそっか秀次だからか。それじゃあ仕方ない。

「ねえ秀次、写真撮ってもいい?一枚だけ。ねえいいでしょ?」
「いやです」
「えー、残念。せっかく迅に自慢してやろうと思ったのに」

迅という名前を出した途端、パフェを食べていた秀次の手が止まった。ギロリと秀次が睨んだ先は私ではなく、テーブルの上に置きっぱなしにしていた私のケータイである。

「……まだ迅の連絡先持ってたんですか」
「え?うん。こないだ嵐山伝いにライン聞いたって連絡が」
「消してください」

間髪を入れずにそう言われた。私は秀次に言われるがまま、迅のラインをブロックした。
一部始終を見ていた二宮が、再びドン引きしたような顔を私に向けた。

「おまえ……いいのかそれで」
「え?うん、だって迅の連絡先なんて知らなくても困らないし」

ね?と秀次に同意を求める。けれど秀次はすでにパフェを食べる作業に戻っていて、私の方に視線の一つも寄越さなかった。だけど一言、なまえさん、と呼ばれる。秀次の口から私の名前が紡がれるだけで、何と甘美な響きを持つのだろう。

「…………明日は、晴れますか」

秀次のためなら何でもしてあげたい。秀次が望むならどんな無理難題でも叶えてあげたい。突然何か甘いものが食べたいと言われようが、迅のラインをブロックしろだとか、そんなものは全然、朝飯前だ。だから、ねえ。私に天気を操る能力があればいいのに。

「どうだろう。晴れるといいね」

今日は生憎、秀次の大嫌いな雨だった。



***
以前三輪誕で書いた年上主人公が思いの外楽しかったので派生しました。たぶん三輪を幸せにできるのは年上主人公だと思います。
三輪誕主人公は19歳でしたが、こちらの主人公は20歳です。