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輝く僕の一等星


護挺十三隊の新年度が始まってから約一週間。つまり自分が新隊士として入隊してから約一週間が過ぎた。霊術院生の時に授業の一環として研修で仕事を経験したことはあったが、あれはあくまでも生徒の為の研修。当たり前だが仕事量も覚える量も比べ物にならない。


そんな中で本日の午前の業務は道場で行われた剣術の鍛錬。久しぶりに体を動かせるとあって自分は勿論他の隊士達も気合が入っていた。しかし、忙しい業務の中でも自分は毎夜欠かさずに斬魄刀との対話を行っていたし自主鍛錬もサボらなかった。結果、本日の鍛錬で先輩隊士から「コイツは一味違うな」という評価を丸ごとかっさらった真子は隊の食堂で満足気に昼食をとっていた。




「やっぱ平子はすげえな」



そんな時、少し離れた席から自分の名前が聞こえてきた。横目でちらりと見れば、そこには自分と同期の新入隊士が数名、真子と同じように食事をとっていた。顔は知っているがまだ話したことはない。確か院生時代は二組の生徒だったはずだ。彼らは自分に気付かず会話を進めている。



「あーあ、あいつと同じ隊かよ」
「あれ、お前平子のこと苦手だったっけ?」
「いや?けどあいつの力だったら席官は確実だろ?なんかなぁ」
「ああ、ちょっと分かるわ。やりづれぇよな」



自分で眉が寄るのが分かった。今日の結果は自分の鍛錬の賜物である。六年間主席を譲ったことのない真子はよく心無い言葉をかけられた為馴れてはいたが、ここでもそうなるのかと正直うんざりだ。そっちがそのつもりなら、入隊一週間で実力の上下を決めて諦めとるお前らなんかあっちゅうまに置いてったる。そう思うくらい許されるだろう。




「俺、久南さんと同じになりたかったー」
「出たー!お前ほんと好きだな!」
「だって可愛くね!?あの天真爛漫さ!」
「可愛いけどちょっと子供っぽすぎるかなぁ」



次に出てきたのは仲の良い女子の名前。自分にとっての白はいつも拳西と喧嘩しているムードメーカーという印象だったので、アイツ男子に人気あったんかい嘘やろ、という感想が正直なところだ。確かに顔は可愛いと思うがアイツはどう考えたってお子様である。



「じゃあ俺矢銅丸さーん!」
「分かる!眼鏡のクール美女!」
「「踏まれてえーー!!」」


食べていたかつ丼を噴き出さなかった自分を誰か褒めてほしい。気がつかれないように小さく咳き込み、目にはじんわりと涙が滲んだ。ふ、踏まれたい?まじかお前ら。リサに本気で踏まれたらお前らの身体貫通するかもしれへんぞ、なんてことは絶対に本人には言えない。言ったら貫通するのは自分の身体である。こみあげてくる笑いをどうにかこうにか抑え込んで、そっと耳をすませた。最初は腹も立っていたが聞いてくうちに段々楽しくなってきた。しかし、



「まあ俺はみょうじだけどな!」
「あっ俺も」
「はあ!?お前矢銅丸っつったじゃん!」
「ばっかやろうそれは憧れ!彼女にしたいのはみょうじ一択!」
「いいよなぁみょうじさん」


ピクリ、と体が揺れた。これは先の二人と同じように笑っては流せない。何故なら出てきた名前はまさしく自分の想い人であるみょうじなまえだったからだ。


「可愛いし強いのに、まったく鼻にかけないよな」
「鬼道が苦手ってのも完璧すぎなくてとっつきやすいし」
「俺らにも普通に挨拶返してくれるしな」
「俺剣術の授業で組んだことあったけどすげえ礼儀正しくて好感持てた!」


自分の強さを鼻にかけないのは負けず嫌いで今の自分に満足してないから。謙虚なんじゃなくて傲慢なところがあるからだ。あいつが鬼道苦手なことをどれだけ気にしてるかお前ら知っとんのか。普通に挨拶返してくれるって、そりゃ挨拶されたら普通返すやろ。けど絶対あいつの頭ん中にお前らの顔と名前は入ってないって断言してやる。あいつ授業じゃ礼儀正しくても俺らの前では結構だらしないってこと知らないやろ。


聞こえてくる会話一つ一つに心の中で嫌味ったらしく言い返している時点でムキになっていることは分かっていた。しかし込み上げてくるムカムカとした気持ちはこうでもしないと抑えられない。


俺はお前らよりなまえのこと知っとる

俺はお前らよりなまえとの距離が近い

俺はお前らよりなまえを好きな自信がある

俺は、お前らより、



カタンと席を立ち、食べ終わったお盆を持ってわざと奴らの後ろを通り返却口に向かった。奴らは近づく自分に気がついたのか、オイ、だなんて気まずげに小突きあっている。



「なんや楽しそぉな話しとったなぁ」
「よ、よお、平子」


ニコリ、と営業用の笑みで話しかけるもその目は全く笑っていなかった。


ああ、嫌だ

まだアイツに何の想いも伝えてない俺が言えることではない。だが、入隊してからどんどん広がる世界は、男は、アイツを放っておかない。本当にもう、余裕なんて全くないのだ。早くアイツを掴まえなければ、なまえは俺の隣をするりと通り抜けていくだろう。ずっと自分の側にいてくれる保証なんてどこにもないということに、気づきながらも気づかないふりをしていた。

いい加減、覚悟決めなアカンな

アイツのことを一番よく知るのは俺で、隣にいるのも俺。俺だけでいい。



「悪いけど、なまえは渡さへんから」



真子の威圧的な笑みに辛うじて頷いたのであろう。極小の動きを確認したところで真子は食堂を後にした。

この決意の数週間後、彼女は彼の前から居なくなる




─────────

和雪様、この度は素敵なリクエストありがとうございます!そして執筆が遅れてしまい大変申し訳ございません!

入隊後に平子が嫉妬する、という内容でしたがいかがだったでしょうか。平子さんって余裕そうに見えて独占欲は強そうだなあという私の勝手な妄想から、こんな形になりました。まだ付き合ってもないのに他人を牽制しそう、よし、書こう、という流れでした。とても楽しかったです!笑

改めまして、企画へのご参加ありがとうございました!これからもallegoryをよろしくお願い致します!

管理人 みーこ




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