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いつか交わした約束の話




暗い暗い闇に意識が沈んでいく

嫌だ嫌だともがいて"空"を目指した

でも"空"を知らない私達は、何を目印にすればいいのかなんて分からなくて

ああ、捕まる、

闇に、飲まれる、

好きよ、好きよ、大好きよ、   、愛してた

だめ、行かないで

   、    、生きて

空が、空を、空に、







「…………っっ!!!っはぁ、はあ、はあ…っは、」



外を見れば既に明るくなっていた。そうだ、確か真夜中に任務から帰ってきてそのまま寝てしまったんだ。日の傾きからいって午後かしらね。


ぐい、と伝う汗を拭った



「…いや、消えてよ……………」



黒の教団本部に来て、何年たっただろう。私は未だに夢を見る。アジア支部での籠の鳥だった私達と、教団という檻の中にいた"私達"が混在した、ぐちゃぐちゃな夢。顔も名前もわからないのに、"私"の意識だけが必死に二人に向かって手を伸ばして、届かなくて、



「ゆ、う……神田に、会いたい…」


心臓も気分も鉛のように重たくて仕方なかった。体の中がぐるぐる回って思わずしゃがみこむ。経験上、こうなったらもうダメだ。甘えてるって分かってる。だけど私の気持ちを落ち着かせることができるのは、もうあの男しかいないんだからしょうがないじゃないか。


「修練場にいるかしら…」


寝起き故の薄着とかもうどうでもよくて、とにかく神田に会いたくて私は修練場に歩を進めた。でも、やめとけば良かったな。ああ、私ってなんて心が狭いんだろう。



「………ぐすっ、ありがとう神田」
「…別に」



そういえばコムイが言ってたっけ、週末にルベリエが本部に顔を出すって。任務で曜日感覚がなくなってたけど、そうか、今日だったんだ。

リナリーはルベリエが来ると、必ず私か神田のもとに訪れる。私達は何も言わないし、彼女もそれが気が楽だったんだろう。だからこんな光景見慣れてるはずなんだ。泣いてるリナリーに神田が寄り添ってる光景なんて。見慣れてるはずなのに、なんででしょうね。今日だけは見たくなかった。


「…っ」


これ以上二人を見ていたくなくて、私は逃げ出した。リナリーに嫉妬したって、どうせ神田は私を見てなんてくれない。アイツは私でもリナリーでもなく、あの人のことしか見えていないから。けどあの夢のあとだけは、その事実がどうしようもなく苦しかった。

苦しいよ、助けて、アルマ、



「助けて…っ」
「ん」
「……ん?」


私じゃない別の声が聞こえて、私は慌てて顔をあげた。だってこの低い声は紛れもない、アイツの声だ。


「…え、なんでいるのよ」
「たまたまだ」
「たまたまって…リナリーは?」
「お前が助けてっつったんだろうが」
「答えになってないわよ、ちょっと、」
「お前が俺を呼んでた、それ以外に理由なんてねえよ」
「…なによ、それ」



逃げ込んだ森でしゃがみこむ私の隣にドカリと腰をおろした神田は、そのまま黙り混んでしまった。なんなのよ。昔からそうだ。私は神田の名前なんて声に出して呼んでないのに、いつもどこからか私の苦しさを察知していつの間にか隣に居てくれる。それがどんなに私にとって嬉しいことか、苦しいことか寂しいことか、この男は分かってない。なんてズルい男なんだろう。

しかし、リナリーには悪いと思いつつも他の女より私の元に来てくれたことを喜んでる自分が、一番ズルくて汚いのだ。



「…神田」
「今は二人だ」
「……ユウ、ユウ……っ………」
「また泣いてんのか泣き虫なまえ」
「うるさいわね…っ



……助けてくれてありがとう、ユウ」

「…ああ」



あの人のことを想ってたって、あの人のことしか見えていなくたって、今は気にならなかった。肩に触れるこの温もり。

今はこれさえあれば、全てが満たされる気がした




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まい様、この度は10万打企画へのご参加、誠にありがとうございます!!

『もしもし運命、』の夢主がリナリーかアルマに嫉妬、だけどハッピーエンド。……ハッピー、エンド…?これは果たしてハッピーエンドになるのでしょうか。神田とリナリーの場面は、あの教団襲撃編の二人の雰囲気を想像していただければと思います。それに嫉妬して逃げ出す夢主、だけどそれを察知して追いかける神田。私の中ではギリギリハッピーエンドになりました(笑)まい様のお気に召しましたら幸いです。

改めまして、リクエストありがとうございました!そして併せて頂いた『もしもし運命、』の感想、とてもとても嬉しかったです。本当にありがとうございました。これからもallegoryをよろしくお願い致します!

管理人 みーこ




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