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君を巡る色彩


病室を巡回していたら、ふと目に留まる名前を見つけた。うーん、久しぶりに見たなぁこの名前。あ、そういえば看護婦さんが噂してたっけ、「おじさんがおじさんをおんぶで連れてきた」って。そんなことをするもう一人はきっとガイさんだ。アラサーっておじさんの括りに入っちゃうのか、可哀想に。


ガラリ、と引き戸を開ければそこには予想通りの姿があった。なんだか気が抜けてしまって、呆れ笑いを一つ。人がいる気配にはとっくに気づいていたのだろう、パチリとあった視線に頭をさげた。


「カカシさん、お久しぶりですね」
「ん?ああ、なまえだったのネ」


相変わらず口布はあるけど額宛は外したオフモードの天才忍者、もといはたけカカシその人が病室の白いベッドで読書に勤しんでいた。


「…イチャイチャパラダイス。相変わらずすぎて安心通り越して不安になります」
「どーいう意味よそれ。いやぁナルトが自来也様から新刊を入手してきてくれてネ。これを機に一作目から読み返そうと思って」
「入院生活満喫しすぎです」


そんなんだから女の子から「カカシさんって強いしエリートだしミステリアスで完璧だよね。イチャパラ読んでる目つき以外は」だなんて言われるんですよ。

心の中で呟いたはずの言葉はうっかり口に出ていたらしく、カカシさんはいつの間にか暗い影を背負っていた。


「お前も言うようになったネ…。昔は先輩先輩ってあーんなに俺の後ろをちょこまかちょこまかして可愛かっ……チョットなにしてんの」
「この点滴に雷のチャクラ流したらどうなるのかなって」
「何この子真顔で怖いんだけど」


カカシさんのこと、そういえば前はカカシ先輩って呼んでたな。医療部隊に移動してからはさん付けになったけど。軽口はこれくらいにして普通にカルテに書き込んでいれば、口布越しでも分かるくらいカカシさんの口角が上がっていた。


「…なんですか?」
「ん?いやあ、ネ。随分医者の顔になったなと思っただけだ」
「…そうですよ、何年目だと思ってるんです?」
「そっか、もうあれから…そんなに経つのか」



私が医療忍者になる決意をしたあの日を思い返しているのだろう。カカシさんはいつも眠そうにみえる半目を切なそうに細めた。



「もう平気なのか?」
「あの日の後悔は消えません。…だから私は今でも医療忍者をやってるんです」
「うん、そうだね…俺もさ」


なんだかしんみりとしてしまった空気に、少しだけ気まずくなる。それじゃあ、とお暇しようとしたところで、タイミングがいいのか悪いのか見舞い客が現れた。


「あれ、なまえさん!」
「サクラじゃない。任務お疲れ様。それにナルトくんと、…初めて見る顔だけど、二人は何で頬が腫れてるの?」
「なまえのねーちゃん聞いてくれってばよ。サイの野郎がサクラちゃんにブ」
「ハハハハ!先輩が気にすることじゃないんです!全然!」
「ギャアアア絞まってるってばよサクラちゃんんん!!」



何で俺!?と叫ぶナルトくんに、ハハハと他人事のように笑っているサイ?くん。そんな二人に同時にラリアットをかましたサクラ。

一気に騒がしくなった病室に、やれやれとカカシさんの方を見たら目があった。その目は先程よりも楽しそうに細められていて少しだけ悔しいなと思いもしたが、この班の賑やかさはカカシさんに必要だなとも思えた。

この子達の明るさは、私達の後悔を吹き飛ばしてくれる。だからこそ守らなければならない。

カカシさん、いいな

私にも、早くそう思える特別な誰かに出逢いたい。そうしたら今度こそ、私のこの手で救ってみせるんだ。


そんなことを思いながら、私はカカシさんに頼まれて三人の仲裁に向かったのだった。




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ネズ公様、この度は企画へのご参加誠にありがとうございます!執筆が遅くなってしまい申し訳ございません。

鳴門世界の日常話をということでしたが、いかがだったでしょうか。カカシ先生はこれから本編の回想の時に登場していただくつもりだったのですが、思いがけず日常的な話を書くことができて大変嬉しかったです。なにせ本編の回想はガッツリとシリアスになる予感がしてますからね…。予定はあくまで未定ですが!ともあれ、少ししんみりした空気になりつつも砕けたやりとりが書けて楽しかったです。ちなみに時間軸はサスケと一回目の邂逅後です!このあとアスマ先生が…ううっ…

素敵なリクエストをありがとうございました。これからもallegoryをよろしくお願い致します。

管理人 みーこ




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