少女と〇〇〇〇〇
この街が、大嫌いだった。
祖国から遠く離れたこの街が嫌いだった。
私の血を知らしめる体の特徴を笑う、周りの人たちが嫌いだった。
私の肌と目の色を覆い隠すことのできない、中途半端な猥雑さが嫌いだった。
息が詰まりそうな外の世界から帰り、扉に鍵をかける。その瞬間が、一日で最も落ち着く時だった。そして真っ先に向かうのは、自分の部屋。父が仕事から帰ってくるまでの間は、そうして自分の部屋に閉じこもるようにして過ごしていた。
当時の私にとって、そこは世界で一番安らげるところだった場所。日本の本やおもちゃ、懐かしい匂い達に囲まれていて、何よりも―――「友達」がいた。
「友達」の前では、いつもの私に戻れることができた。なんでも、思っていることを、自分の言葉で吐露することができた。
残念なことに、「友達」は言葉を持ってはいなかったけれども、不思議と、私の言っていることを、理解しているように思えた。
こつん、こつん。
部屋のドアを開けようとしていると、あの音が聞こえてくる。何かと何かがぶつかっている音。ささやかだけど、私を幸せにしてくれる音だ。
はやる気持ちを抑えてドアを開け、私は「彼ら」に声を掛けた。
「ただいま、みんな」
(了. 2015/02/12)