◎太一とアグモン(デジモンtri) ずっと聞こえていた歌声が、突然止まった。 いつから聞こえていただろう? 確かそう…初めてデジモンに会った幼い頃からだった気がする。 近くで誰かが歌っている訳でもない。 でも、どこからともなく俺の耳に微かに入ってくるその歌声は、いつも俺の…俺たちの背中を押してくれていた気がした。 いつも勇気を…元気を…与えてくれていた…そんな気もしていた。 でも。 『ゴキゲンな蝶になって』 いつものこの歌い出しが今はもう聞こえない。 まるで蝶の様に…いつの間にかヒラヒラと俺の耳からは飛びだってしまった様だ。 なんだかポッカリと心に穴が空いたように寂しい。 あの歌は…いったいどこへ行ってしまったのか。 「たいちぃ?どーしたの?」 「…大切なもんが飛んでった…気がするんだ。」 「たいちの大切なもの?じゃあ、急いで探しにいかなくちゃ!」 「いいんだ、アグモン。どこに飛んで行ったのかも全然分からないから。」 「でも…。」 あぁ、本当にどこに飛んで行っちまったんだろう。 そう思いながらもずっと流れていた曲を思い出す。 …うん、やっぱり良い曲だ。 …あれ? 「……アグモン、大切なものはまだちゃんとあったよ。」 「え!良かったね、たいち!」 「あぁ。」 確かにもう直接耳にはその曲は流れて来ないし、どこかへと飛んで行ってしまった。 だけれど、その曲自体はまだずっと俺の中にあって…同じ様に聞こえてくる。 なんだ、ちゃんとあるじゃんかよ。 思わず歌詞を少し口走る…やっぱり良い曲だと何度も思ってしまう。 そしてなんでか、とても「ありがとう」と言いたくなってポツリと俺は呟いた。 またいつか、俺の元にその蝶は戻って来てはくれるのだろうか。 もし、戻って来てくれたなら…。 今度は一緒に歌えたらいいな。 *** 和田さんの歌が本当に大好きでした。 本当にありがとうございました。そしてこれからもずっとずっと大好きです。 04/08 23:21 mae top tugi |