遺跡へと向かっているその途中、エドワードがふと見ると、そこにソレは出現した。 ――まるで本当に空中に浮かんでいるようだった。 周りを切り立った山で覆われ、上を見上げればすぐそこには空があった。 建物は全て石でできており、屋根などの木でできたものはすでに腐ってなくなってしまっていたが、何十年とたった今もなお、その精巧な石造りの壁は、当時のままその姿を残している。 インカを征服し、神殿を破壊し、黄金を剥ぎ取ったスペイン人征服者たちも、その精巧な石積みまでは破壊できず、その上に住居を建てたというほどの頑丈な造り、それはこの時代には考えられないほどの高度な建築技術なのだという。 エドワードはその壁に触れてこの文明のすばらしさを肌で感じ取った。ロバートがなにやら指示を出しているようだったが、エドワードの耳には届いていなかった。そうしていると、ロバートがエドワードに近づいてくる。 「グリース、先ほど君は私の話をまったく聞いていなかったね」 「あ…、すいません」 エドワードが答えると、ロバートは小さく息をつき、続ける。 「他の学生にはそれぞれ遺跡の調査をするようにといった。が、君は特別連れてきた。それに私の授業もとっていない。そうだね。よって、君は好きにまわるといい。ただし、この前、私が言ったことだけは、くれぐれも忘れないように。以上だ」 いいね、と念を押され、ロバートは他の学生のところへ向かった。今日から一日中、ここでの調査になる。調査といっても、教授の授業の内容を、実物を見て確認するといった、復習のようなものだ。そうすると、やはりロバートが言ったとおり、授業をとっていないエドワードは何もすることがないのだ。 ――好きにするといい。 そう言われたのだ、エドワードは学生が居る方向とは逆へ歩き出した。とりあえず、一番高いところに行って全体を眺めてみよう、そう考えた。 |