白を貴重とし、必要な家具のみ置かれた簡素な室内。
陽はとおに昇っているにも関わらず室内には冷たい空気が流れ、温もりのあるベッドから出る事を臆する気持ちを抱きながらも吉良は重い体を起こしストーブを点け洗面所へと向かった。
「――…痛っ…」
上半身裸にスエットの下のみを履いた吉良は鏡に映る自身の体を見つめる。
白く血色の悪い肌の所々に浮かぶ真っ赤な歯形……その一つに先細いしなやかな指先を這わせればチリチリとした痛みに微かに眉を寄せた。
血の滲んだ跡の残る其れは恋人の性癖。
身体を痛めつける事で内壁の締まりの良くなる上、血を見ると興奮する…というなんとも厄介な性癖の持ち主である彼は噛み痕が治りかけると行為の最中噛んでくる。
決して治りきる事のない其れはまるでコレは自分の所有物なのだと謂わんばかりに赤く主張する。
(独占したいならキスマークとか、もっと可愛らしいモノにしてくれればいいのに…)
鏡に映る痛々しい噛み痕に小さく溜め息を漏らしながらも側にある棚から消毒液を取り出せば慣れた手つきで其れを脱脂綿に付け傷口に塗る為に鏡に視線を戻す…………とその瞬間、背後に映る恋人の姿…。
「―――……ッ!…び、びっくりするじゃないですかっ!…起きたなら声くらい掛けて下さい…」
「ん、イヅルが気付かんのが悪いんやん………なぁそれより、イヅル何してるん?」
慌てて振り向けば同じくスエットの下のみを履き寒さを凌ぐように布団を頭から被った彼の姿を捕らえ窘めるように言葉を掛けるも反省の色など全くない呑気な表情を浮かべた恋人は手にした消毒液を見つめ不思議そうに訊ねる。
「何って…誰かさんが噛み痕なんて付けるから消毒してるんじゃないですか…」
その反応に不服げに頬を膨らませた吉良は再び鏡へと顔を向けるとわざとらしく棘のある言い方をしながら作業を再開しかける。
――…がしかし。
「――……そない早ぉ治してまた噛んでほしいん?」
不意に耳元で低く囁かれたかと思えば被っていた布団を広げ後ろから吉良を包むように抱き締めてくる市丸。
「…ッ、そんなんじゃ…離して、下さいっ!」
その行為に自由を失った吉良は顔を真っ赤にさせ抵抗するも体格、力共に差のある相手には適わずただ抱きすくめられる。
「そない暴れんの…消毒やったらいくらでもボクがしたるから……」
再び囁かれ高鳴る鼓動にそれを誤魔化すよう抵抗しかけた瞬間…首筋に付けられた噛み痕に這わされた生暖かく柔らかい舌の感触に吉良は思わず甘い吐息を漏らした。
「んぁッ、いや…やだぁ…そんな、じゃ…治んないっ…」
必死に抵抗するも甘い刺激は力を奪い、上擦った声は市丸を誘惑するように行為をエスカレートさせていく。
「ひぁ、んッ…ぁ…い、やぁっ……」
「いやいや、謂わんといて?…ッ…ボクん事…嫌い…?」
洗面所に手を添え突かれ揺さぶられる身体を必死に支えながら涙を流し喘いでいれば律動を繰り返す其れは不安げな声を漏らした。
(――…そんな事、わかってるくせに…)
染まるよ
休む暇もない腰の動きに、ただ僕の唇は狂ったように貴方への愛を紡ぎ続けた。
(身体も心も、全てが貴方だけに溺れる)
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我がサイトではギンの性癖→血を見る→噛み癖という線を推していきます(笑)
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