見ないで。




見ないで、下さい。




僕を、見ないで…。




「なぁイヅル」




小さく開かれた唇から零れた"僕"という存在を示す其れがやけに心地良く耳に焼き付いてそれでいて酷く耳障りでたまらなく嫌で、いっそ何も聞こえなかったフリでも出来ればいいのだろうに其れを口にした彼はそんな事を許してくれる程優しい方ではない事を僕は知っているから仕方無く、はい?と平静を装い適当な相槌を返してみる。


そうすれば彼は一歩一歩と距離を縮め僕の傍らに腰を下ろし、何食わぬ顔で"愛しとる"などと甘い科白を耳元で囁き山積みの書類と向き合う僕を押し倒すのだ。


無理矢理に指を絡めて、交わる体。まるで恋仲のように行われる其れが嫌で、嫌で、仕方ない筈なのに抗えない自分が惨めで情けなくて、そうして、嗚呼きっと今日も銀色に染まる視界が滲むのだろう。




どうか、




僕を見ないで下さい。




浅ましく醜い僕を。




貴方に愛されたいと願ってしまう




愚かな僕を、




どうか、




見ないで…。













( 僕の傍らで眠る貴方の、さらりと流れる銀色に残る知らない煙草の香りに酷く嫉妬する僕を、どうか卑しめて、お嫌いになって下さい )















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藍市吉イメージ文。







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