じりじりと照りつける太陽、鳴り止まない蝉時雨れ、縁側で氷水に冷やされる西瓜を指先で弄ぶ貴方を団扇で扇ぎながら感じるのは夏の香り。

隊長羽織りが暑いなどと文句を言う口をどうにか閉ざそうと用意した薄手の着物。藍色の其れは酷く貴方に似合って己が用意したにも関わらず妙に妬ける想いが胸を占めた。けれど僕は僕が思っていたより単純な人間であったらしく、おおきにと、至極嬉々とした笑みを向けられただけでそれは消え、同じく用意した西瓜を冷やし今に至る。

団扇を動かす度揺れる綺麗な銀糸に見惚れていれば西瓜遊びに飽きたのか、縁側にごろりと寝転がり、僕の浅葱色に散らばった銀色。


「…西瓜、冷えたら起こしてな」


謂うが早くとはこの事か、了承も得ぬ儘に人の膝を拝借したかと思うと次の瞬間には欠伸を一つ漏らしうつらうつらと揺れ出す頭。腹に乗っていた手がズッと勢いよく滑り落ち床を叩けば眠った合図。

はあ、と溜め息を吐くのは今日が初めてではない僕は眠りに就いた貴方を安易に起こしたところで状況が変わる事は無い事も良く理解している訳で、膝の上で心地良さそうに寝息を立てる其れを叱る事は諦め仕方なしに団扇を動かした。


天気は快晴。

風は微風。

西瓜が冷える迄後数十分。


毎年のように繰り返すこんな些細な風景が、こんなにも恋しく思える日が来るなんて思いもしなかったあの日々。

うだる暑さのも目に余る我が儘も、少しだけ、本当に少しだけ、好きになれそうな気がしたんです。



戻る事が出来るなら、どうかもう一度、貴方と共に…。









夏が来る

貴方が居ない

夏が繰る









( 嗚呼やはり、貴方には藍色が似合うのですね )









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