嗚呼あかん、口元寂しいわぁ…。


ぽつり、浮かんだ思い。
最初は小さかった欲も、目の前で淡々と書物を読み続ける金髪の青年の横顔を見ていれば感情はじわりじわりと膨れ上がり、気付いた時にはその衝動に負け、青年の肩をぐいっと引っ張り半ば無理矢理に此方へと顔を向けていた。
何の前触れもなく体を引かれ読んでいた書物を畳に落としうわあ等と素っ頓狂な声を上げた金色の青年の髪が反動によりさらりと揺れる…まるで男の心境を表すように。

読書を中断させられ不服げな視線を送る青年を構う事無くいつものように貼り付けた笑顔を送り返す男はそっと耳元に唇を寄せ囁くように名前を呼んだ。それだけでびくりと肩と瞳を揺らした青年は酷く戸惑った表情で、何ですかとか細い声を発し、こてんと首を傾げた。


「なぁ…キスさせてぇや」


くしゃり、と柔らかな金色の髪を撫でて、その間々に頬に優しく指を這わせ男は笑う。そんな態度に青年は頬を桃色に染めて恥ずかしそうに瞳を揺らし困ったように、あ、う…と、言葉にもならない声を発してその場を凌ごうと心見てみるもののそんな手が効く筈も無く、更に笑みを深めた男は再度名前を囁きかける。
抵抗は無駄と判断するも強い羞恥を感じて思わず俯いた青年は、しかしながらそれさえ無駄なように頬に添えられていた細長く骨ばった指先に顎を捕らえられ視界を合わせるように顔を持ち上げられてしまう。
交わる視線、優しく降ってくる甘い口吻けを精一杯受け止めようとしながらもやはり払いきれない強い羞恥心に唇が離れる度嫌だ嫌だと小さな声を漏らす。
そんな青年の姿が可愛らしく感じられ満足げに笑みを漏らした男はいつの間にか顎から後頭部へと位置を変えていた手とそっと腰に添えた手で青年を支えながら押し倒すように再び口吻けようと青年との距離を縮める、も不意に肩を掴まれぐっと押し返された為にその距離は一気に開いてしまった。
そうさせたのは言わずもなが顔を真っ赤に染めた金髪の青年。


「もう、ダメ、ですってばッ」

「何がダメ、なん?」

「…恥ずか、んッ!!」


首をふるふると振って懸命に否定する目の前の青年をお構いなしに再び腕の中に捕らえた男は小さく触れるだけの口吻けを交わしニヤリと口角を攣り上げて悪戯っぽい笑みを浮かべて"愛しとる"と低く囁きかける。
あまりに突然の事に頭が追い付かず固まってしまった青年に酷く楽しそうな笑みを零しながら男は何度目かの甘く優しい口吻けを送った。





僕らはこの衝動を止める術を知らない

( それは 愛 故に )









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