暖かな陽射しの差し込む平日のオフィス。
キーボードを打つ音、書類や話し声、忙しなく行き交う人の足音。
様々な音が鳴り響き、忙しさを露わとするその室内の一角。普段ならば応接用に用意されているのであろう磨り硝子のみで区切られた空間だけは周りの忙しい雰囲気とは異なった空気を漂わせていた。


「………で、他部署の人間が人のオフィスで何してんねん」

「何、いうて…ちょっと休憩しに来ただけやん」

「ふざけんなや、俺かて忙しいねん…ちゅうかお前も早よ仕事せなまた書類溜まるんちゃうんけ…せやろ、吉良」

「………はぁ」


狭い空間に設置されたソファ。其処に揺れるのは何とも目を惹く金と銀。
ソファにぐたりと寄りかかり部下に用意させたコーヒーを一口飲んだ平子は目の前に座り恰も自らのオフィスのように振る舞い当たり前のようにソファに身を委ねる市丸に怪訝そうな眼差しを送った。


「ほれ、吉良かて迷惑そうにしとるで」

「そないな事ないわなぁ、イヅル」


所謂板挟み状態の吉良は目の前と真横に座る上司の言葉に視線を泳がせた。

これは今日特別見られる光景ではない。
執務が嫌いな市丸課長(何故この地位迄上れたのかも謎だが)は暇さえあれば部下である吉良を無理矢理連れ出し他部署である平子のオフィスへと遊ぶ為に足を運んでいるのだ。


「……はぁ…兎に角お前が暇でも俺が忙しいねん、今日は相手出来へんで」

「そない言わんといてやぁ、今日はボクら平子はんが寂しいんとちゃうか思うて来ただけなんやから」

「………何で俺が寂しなんねん」

「何で、て……藍染はん今日から海外出張やろ?」


市丸のにへら、とした笑みが酷く歪められた気がした。それはさながら面白い遊びを見つけた子供のような表情。
それと相反し眉間に皺を寄せた平子は手にしていた紙コップをテーブルに置くと意味が解らないと言いたげに口を開く。


「アイツが居らんのと俺が寂しなんのとどない繋がりがあんねんな」

「…そない隠さんでええのに、恥ずかしい事ちゃいますよ?誰でも好いとる人が遠く行ってしもたら寂しなりますから…なぁ、イヅルぅ」

「え、わぁッ、ちょ、市丸さん離して下さいっ」

「あんなぁ、俺はあないな奴好いとらんし寂しいなんぞ微塵も…ちゅうか微妙な敬語止めぇや気持ち悪い、あと人のオフィスでいちゃつくなボケ」


目の前でまるで見せ付けるように吉良に抱き付く市丸に、平子は苛々と眉を顰めた。
否、苛々は朝からずっとしていたのかもしれない。朝起きれば既に姿のない同居人は丁寧に朝食を用意してくれていたがそれを食べる気にはなれず、会社に着けば待っていたのは普段の仕事に加え何時もなら藍染がこなしてくれている分の仕事迄丁寧にまわされる。
胸の奥はもやもやするも原因は解らず、ただ何をするにも気持ちが落ち着かないせいか上手くいかない為に苛々は募るばかりだった。


――別に寂しないわ、あないな変態眼鏡何処となり行けばエエ…寧ろ居らん方が可愛い女の子に声掛けやすいし、仕事サボれるし、ランチもバランスバランス言うて俺の嫌いなもんばっかり入った弁当やのぉて好きなもん食えるし、家帰ってものんびり風呂入ったり酒飲んだり好き勝手出来てエエ事づくめやねんで?

…唯ちょっとアレや。

他のヤツが煎れたコーヒーが思いの外美味ぉないっちゅうのと代わりに仕事してくれるヤツが居らんのと、部屋がだだっ広ぉ感じるんと、ベッドが冷たいのが難点なだけで、別にあないな奴居らんくても俺は…俺は…







「―――ってお前ら何時までいちゃついとく気やドアホ、真っ昼間の社内で何してんねん」


「何って…見て解らん?ちょおイヅルが可愛過ぎるから押し倒しててん…あんまり野暮な事訊かんといてやぁ」





……………。





「……此処はラブホかボケェッ!!(叫」


「何や、そないカリカリして…軽い冗談やないの(笑」


「…………嗚呼…胃が痛い…(泣」





その後、藍染の居ない数日間毎日やってくる市丸の嫌がらせに似た惚気や目の前で繰り返される吉良に対する猥褻行為にうんざりした平子は色んな意味で藍染の帰国を待ち望んだのであった。



「惣右介…早よ帰って来て……この変態狐何とかせぇーッ!!!」





--------------------




最近ちょっと藍平に浮気疑惑浮上な僕(笑)

きっと現世でもギンに振り回されるイヅルはギンと同棲中の恋人同士で、きっと現世でも平子隊長の部下な惣右介もやっぱり平子隊長と同棲中の恋人同士だけど、同棲じゃなくて同居だ、とか恋人じゃなくて一方的にヤられてるだけだ、とか素直に認めない平子隊長…なら可愛い(笑)





戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -