「ほな行ってくるわぁ」






「はい、お気をつけて」








格子窓から心地良い風が通り抜ける三番隊執務室。
早朝から例の如く誰かさんの溜めて下さった書類の整理に追われ筆を走らせていた僕の耳に入った言葉に顔を上げる事なく相槌を返した。
最近現世での任務が増え、それと合わせて最近よく交わされるようになった市丸隊長への餞別の言葉がこれ。
本来であれば副官である僕はもっときちんとした見送りをすべきなのだろうが市丸隊長が居ない上、居ても減らない書類を片付けていればそんな暇もない訳で。
いつの間にか当たり前になった会話を交わして暫くすれば静かになった執務室には再び筆を走らせる音とそよぐ風に踊る書類の小さな音だけが支配しはじめた。

邪魔な音などない、静かで心地良い空間。
無意識的に深呼吸を一つ、そうして漸く出来上がった書類を一枚処理済みの書類の山へと置いてやり、同じく山積みの未処理の書類に手を伸ばす。








「――…なぁ、イヅルは寂しないん?」








と、突然その心地良い静寂を破ったのは遠に消えたと感じていた存在の声。
間違える筈もないその声に僅かに視線を上げれば任務へと向かった筈の市丸隊長は未だ執務室の入り口に留まっていた。
ギュッと拳を握り締め、明らかに何かを堪えるような様子で此方に熱い視線を送っている(とは言っても瞼は普段と変わらず閉じていらっしゃるが)







「―――…何が…ですか…?」







「〜〜っ!せやから、ボクが任務に行く事がに決まっとるやないの!」














………は?











いや、寂しくないかと言われれば多少は寂しいが…恋人が仕事に行くのが寂しいだなんだと言っていられるほど僕は女々しい男じゃあないし暇も無い、そもそも…任務と書類整理、どちらかを主に担当してくれと頼んだ際、執務室に籠もっとったら根暗んなってまうなんてふざけた事を言って任務を選んだのは市丸隊長ご自身じゃあないですか…。


「そりゃあ寂しいです。ですが立派に任務をこなして無事に隊長が帰ってきてくだされば僕はそれで十分です」


「…せやけど、ボクが朝から夜遅くまで居らんくて…浮気しとんちゃうかとか考えへんの?」


「そう言ってるうちは大丈夫ですから」


小さく溜め息を漏らし筆を降ろせば重い腰を上げ、ほら早く行ってきて下さい、と半ば強引に執務室の外へ追いやり扉を閉めた。
何やら外からイヅルのアホーッ!!なんて憎たらしい叫び声がするけど、現世に着けば此方がうんざりする程にしつこく電話してくるんだろうなぁ…。


まったく…うちの隊長改め構ってちゃんにも困ったものだ。













…とは言え…













実はそういうところがたまらなく可愛くて好きなんだけど。…なんて思っていたりする訳で。
まぁ…本人には口が裂けても言ってはあげませんけどね。



















僕らの温度差は愛の証



















(やぁギン、今日はうちの隊との合同任務だね、宜しく…ってどうしたんだい?朝から泣いたりなんかして)


(藍染隊長…ぐすっ…ボクと浮気してくれへん…?)


(……………え?)







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ギンは束縛独占されなきゃ愛されてる気がしないタイプだといい!そしてそれを理解していて敢えて冷めた態度なイヅルは多分ドSです(笑)





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