ギシリ、と床の軋む音を響かせ揺れる視界に足を奪われそうになりながら月明かりの照らす廊下を三番隊副隊長吉良イヅルは上機嫌で自室に向かい歩いていた。

…今日はイヅルの誕生日。

普段よく飲み会をする気の知れた仲間に誕生祝いをしてやると言われ行きつけの居酒屋にて酒を飲み交わし、そろそろ御開きというころには足取りも覚束ないまでに酔いがまわっていた。
普段ならそのまま其処で酔いつぶれ、酷い時には朝を迎えてしまうのだが…――。
(…帰り…待ってる、って…約束…)
飲み会に行くと伝えた時、快く笑顔で見送ってくれた恋人。
思考さえ上手く廻らない脳内に木霊するのは出掛け様その人と交わした軽い約束。




「――…市、ま…たいちょー…」

ふらりふらり、壁に手を添え体を支えながらやっとの事で自室に辿り着いたイヅルはそっと扉を開きながら呂律のまわらぬ口を動かして愛しい恋人の名を呟く。
と、途端に扉を握っていた腕を掴まれ室内へと引っ張られる体。

「イヅル、遅いわァ…おかえり…」

倒れ込んだ先にあったのは愛しい愛しい恋人の姿。
突然の事に一瞬きょとんとしたイヅルではあったが視界にギンの姿が映れば一変、満面の笑みを浮かべそのまま抱き付き首もとへとまるで猫のように顔を擦り寄せる。

「んゥー…たいちょー、寂しかった…れすぅ」

「寂しかった言うてめっちゃ機嫌良さそうやんっ……それにイヅル酒臭いわァ、酔おてるの?」

「…酔ってないですよぉ〜」

抱き付く可愛い恋人の体を支えるように抱き留めたギンは明らかに酔いのまわっているその姿に苦笑を漏らすも、約束通りきちんと帰ってきた事もあり酷く咎めはせず優しく金糸を撫でる。

「……イヅル、今日は風呂入らんと早よ横んなり?着替え取ってきたるから」

自身を支えきれないのか完全に体重を預けてくるイヅルを半ば抱えるように用意しておいた布団まで誘ったギンはそっとその体を横たわせてやると寝間着代わりの着流しを手にイヅルのもとへと戻る。

「イヅル自分で着替えれる?ボク手伝ったるか?」

布団の上、ゴロンと脱力しながらノロノロと帯紐を解こうとするイヅルに母親よろしく声を掛ければ上目遣いにこくりと頷かれ脱がせてとばかりに両手を伸ばしてくる。
何事もキチキチとこなす相手の珍しい様子に小さく笑みを零したギンはまるで子供の世話でもするように解きかけの帯紐を解き、死覇装をそっと開いていく。

真っ黒な服、その下に現れたのは真っ白く僅かに血色の悪い普段のものではなく酒のせいかほんのり赤く色付く熱っぽい肌。
はじめから性欲を持て余していた訳ではないギンであったが恋人の普段以上に艶やかさを漂わす体や時折吐き出される色っぽい吐息を見聞きしていれば次第に芽生える小さな小さな黒い感情。

(…介抱したるんやから…ちょっとくらいの悪戯罰当たらんやろ…)

ふわり浮かんだ感情に身を任せ、前を完全に開ききった死覇装から露わになる体に細長く冷たい指先を這わす。
小さく跳ねる喉…浮かび上がる鎖骨…鍛えられた胸元…。
擽ったげに時折身を震わせるイヅルの様子に愉しそうに口端をつり上げたギンはヒタリ、其処で手を止める。

柔らかくきめ細かな肌を伝う指先、その近くでまるで触ってと言わんばかりに小さく主張する一点。

…悪戯に。呼吸の度上下する其処で主張するピンク色に染まった乳首を人差し指と親指で優しく摘む。

「…んァっ…」

普段なら羞恥から制止の声が掛かる行為も今はその判断力さえ無いのか吐息と共に吐き出されたのは甘く熱っぽい小さな声。

抵抗のないその様子に機嫌を良くしたギンの行為はエスカレートする。

摘んだ乳首をクニクニと弄り空いた片手で器用に袴をずらしていく。そして露わになった褌もこれまた器用に解いていればふと赤く潤んだ瞳と目が合った。

「…ァ、んっ…た、ちょ…何して…?」

弱い快楽を感じながらも状況を判断出来る力が残っていないのか紅潮した表情で訊ねるイヅル。

「…今な、イヅルの事いっぱい気持ち良おさせたろう思おててんけど…イヅル、嫌ァ…?」

そんな様子にそっと顔を近付けたギンは潤む瞼に軽く口付けつつ緩んだ褌の隙間から手を忍ばせまだ硬さを持ちきっていない性器をそっと握りながら囁き掛ける。

「…ンッ、あぁ…嫌…じゃな…ぃッ…」

低く甘い声と直接的な刺激にピクン、と手の中で小さな反応を示す其れを優しく扱くように手を動かしてやれば理性や判断力のない脳内が強い欲に支配されたのか嫌がるどころか事が行い易いよう自ら脚を緩く開き手中の物を硬くしていくイヅル…その淫らな姿にギンは笑みを深くさせた。

「………今日のイヅルは積極的やね」

ゆっくりと体を起こしながらそう言えば邪魔になる脱ぎかけの袴と褌を取り払う。
根本から先端まで、柔らかな皮を擦るように暫く扱き続けていけばとろりと先端からは透明な液体が滴り落ちた。
自身の手により喘ぎ乱れる恋人。
その姿をうっとりと見つめていたギンはふと何か思い浮かんだようにその手を止めた。

「――……嗚呼、せや」

与え続けられていた快楽が止んだ事に荒く呼吸しながら潤む瞳を向ければ愉しげな笑みで此方を見つめる銀狐。

「今日イヅルの誕生日やろ?せやから今日はイヅルのシたい事、シてほしい事言い?」

「――……ぇ」

突然の提案に流石に戸惑うイヅル。
しかしそんなイヅルを余所に、言われないかぎり何もしないと言わんばかりに布団にズシリと腰を下ろすギン…。

「ほら、ちゃあんと言わな…なぁんも進まんよ?」

意地悪な言葉。普段のイヅルなら何とでも言い返せるであろうそれも今の状況では不可能に近く…流石に感じる僅かな羞恥にもじもじしながらも欲に駆られた自身を抑えるまでの理性は無い為にイヅルは小さく唇を開いた。


「――…た、ちょ……た…です…」


「ん〜?何言うとるか解らんなァ」


「…たいちょ、の…舐めたい…ですっ…」


先程より更に真っ赤な顔で言われた内容にギンは低く小さな笑みを零す。
普段冷徹な副官からは想像出来ない発言。行為の最中時折見せるその姿に感じる優越感がたまらない為にこういった意地悪を止められないのだろう、と内心思いながらも「良く言えました」と誉め頭を撫でてやれば口淫しやすいよう自身が身に纏う衣類を脱ぎ払いイヅルの直ぐ傍に腰掛ける。

「………ん…」

恥ずかしさを隠すよう小さな声を漏らしながら体を動かし俯せとなり、這うようにギンに体を寄せる。
緩く開かれた脚の間に体を入れれば目の前には緩く立ち上がる未だ完全には勃起しきっていない愛しい人の性器。
其れをそっと根本から優しく握れば既に剥け露わとなっている敏感な箇所に軽い口付けを贈りゆっくりと舌を這わせていく。
舌先を尖らせ鈴口を刺激し、亀頭全体を舐めるように舌を動かす。それに合わせ茎の部分に添えた手をゆっくりと上下させてやれば頭上からは小さな吐息が聞こえた。
(隊長、気持ちイイ…の…かなぁ?)
まるで子猫が母猫の乳房に吸いつくようにちゅぷちゅぷと水音をたてながら先端部ばかり攻めていたイヅルはチラリと上に視線をやる。
青白い月明かり、ぼんやり浮かぶ恋人の表情。甘い刺激に普段崩れぬ笑みは何処か妖艶で…。
その姿に見とれているとふと交わった視線。

「…ン、あんま…見んといてやァ…」

恥ずかしいのかからかいなのか掴めない言葉を発しながらサラリと垂れ下がる金色の前髪を掻きあげるように撫でられる。
それにより行為の邪魔が無くなったイヅルは唾液に濡れる唇を開き先程より硬さも質量も増した陰茎を口内いっぱいに咥え込み口を窄めゆっくりと頭を上下させ、同時に茎の根本でせり上がった睾丸を片手で愛撫する。
視線こそ外したとはいえ頭上から微かに聞こえる声を押し殺したような吐息に愛撫を続ける己の自身さえ興奮し熱を帯びだしたイヅルは愛撫の手を休める事無く、下半身でいきり立つ自身を布団へと擦り付ける。

時折苦しげにくぐもった、しかし熱の籠もる吐息を漏らしながら愛撫を続けていけば次第に口内で赤黒く膨れ上がる欲望。
体の筋肉を硬直させ、乱れに乱れた呼吸を繰り返すギンは近付く限界にくしゃりと金糸を握り解放の時を待ち望む…も、その様子に気付いたイヅルは寸前というところで一気にその行為を止めてしまった。





←前/次

-1-




戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -