最近、隊長が構ってくれません。
1日の執務をこなし、自室へと帰宅したのはもう月も高く昇った時刻。
真っ暗な室内は何処かひんやりした空気を孕み、執務で疲れた身体を更に疲れさせる。
一週間くらい前まではこんなんじゃなかったのに。
はじめて隊長に"好きや"と謂われた時は何をふざけてるんだろう、なんて思ったりもした。
でもそれから何となく恋人みたいなカタチになって…いつも帰ったら、上司のくせに僕より先に僕の部屋に居て、勝手に布団なんて敷いて寛いでて。
お風呂入ろうとしたら一緒じゃなきゃ厭とか子供みたいな駄々をこねるから…照れ隠しに仕方ないですねなんて謂いつつ一緒に入ったりして。
寝る時だって。
一人用の狭い布団に無理矢理身を寄せて入って来て、もう一組出すか訊いたら"イヅルに引っ付いて寝たいから要らん"とか我が儘謂いながら一つしかない枕独占したりしてたんだ。
なのに一週間前、そんな行為の全てがパッタリ止んだ。
何かした記憶はない。
執務室でだっていつも通りの態度だし。
今日だって普通に話したりして…。
何、考えてるのか解らない。
いつだって自分勝手で、こっちの気持ちなんてそっちのけで…何でこんなに、こんなに…僕、振り回されてるんだろ…。
「……イヅル?どないしたん」
気付いたら僕は、隊長の自室の前に居た。
服も着替えず、何を謂いたいのかも纏まらぬままただ感情的に涙を浮かべ目の前の相手に視線をやった。
「…………っ」
「……イヅル、何泣いとん?誰かに虐められたん?」
「……ッ…たっ…ちょ…」
「………?」
「…た…いちょ、僕…ッ事…嫌い、なったんですか…?」
情けないくらい震える声。
溜まりに溜まった涙がポロポロと頬を伝いだせば抑えが利かなくなり、止まらない涙で顔がぐしゃぐしゃになる。
「ちょっ…イヅル?泣きなや…僕がイヅル嫌いになる訳ないやんっ」
「…だっ、…たいちょ…僕の部屋、居なっ…ずっと僕独りでッ…」
わんわんと泣き止む様子を見せない僕に流石に慌てた隊長は僕を部屋に引き込むなり強く抱き締めてくれた。
久々の温もり。
優しく宥められる背中。
漸く涙が止まりだした僕に安心したのか抱き締めた腕の力が緩むと困ったような笑みを浮かべた顔が此方を覗き込んだ。
「――…イヅル…御免な?…ボク、イヅルに嫌われとる思ぉたんよ」
…………え?
「…嫌われ…僕が……?」
「せや。イヅルいっつもボクに仕方なく付き合おてるみたいやったし、何より一回も好き謂われた事なかったし…」
……あぁ、そういえば確かに…。
「……好き、です…」
いつの間にか
「…好きなんです…」
当たり前の存在になってた
「…隊長が居なきゃ…」
僕
「駄目なんです…」
This love is resemble narcotic.
この愛は、まるで麻薬。
(いつの間にか僕が一番依存してた)
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英語お題シリーズ。
一応それぞれが短編だからshortにupしました。
わんわん泣くイヅルもかわゆい…←
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