零日目

私にはもう関係のない事だけど、ウィンターカップが始まった。
初日こそ真に付き合って見に行ったけれど、もう行かない。
というか、真も初日の一回きりでそれ以降は行くつもりがないみたいだし。

それより目下の話題は明日からの冬期休暇についてだ。
学校が休みになるのは大歓迎だけど、互いの予定を確認しておかないといつもの様にふらっと遊びには行けない。

「…寒い」
「そんだけ防寒しておいてまだ言うのかよ」
「あ、真がぬくい」
「くっつくな。歩きづれえ」
「嫌だ」
「…普段寄って来ねえのにこういうときだけ…」

横でぶつぶつ言われているけどどうでもいい。
気分で行動が変わるのはお互い様だ。

「で?休み中何か予定あんのか?」
「真は?」
「30日から2日までは親の実家だな。あとはバスケ部、そっちの予定はお前も知ってんだろ」
「ん。私何もないから」
「……」

真が何か言いたげで、それでいて迷っている様な間を作る。
いつもストレートに話すくせに珍しい。

「何?」
「…家に帰ったり、しねえのか?」
「え」

ああそうか、私が一人暮らしで、何か事情がありそうなのを気にしてくれたのか。
いや、気にしたというか厄介事は遠慮したいという事か。
別に隠していたつもりは無いのだけど。

「家帰りたくないから一人暮らししてるの。帰って来いとも言われてないし」
「へえ。なら明日そっち行くぞ」
「いいよ」

その後も家に着くまでつらつらと取り留めの無い話をしつつ、ふと思い出す。

「あ…でも妹には言われてる」
「は?」
「帰って来いって」
「妹?」
「そ。双子の妹がいるの」

何気なく言っただけなのに、真には何故か笑われた。

「テメェみたいのが二人もいたら大変だな」
「…見た目は似てるけど中身は全然違うから」
「あっそ」

あの妹は、私にとってのバスケみたいな存在だ。
大好きで、大嫌いで。
だけどいざ直面すると抗えない。

…まあ、少なくとも当分は会わないから関係ない。
電話やメールは毎日の様にあるけれど、無視し続けているんだから。

「家着いたぞ」
「……」
「おい」
「寒い」
「知るか。離れろ」
「うー」

今は真でいっぱいいっぱいなのだし。


  

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