恋とはどんな気持ちなのだろう? 子供の頃はそう思いながら少女漫画を読んでいた。でも、私が大阪に引っ越して初めてあった男の子に初めての恋をした時凄くもどかしくて、熱いものだとわかったねだ。
「謙也!」
「ん? おお、お前か」
「これ見て!」
謙也にそれを押し付けると不思議そうな表情をされる。絵だけを押し付けても当たり前だよね。
「絵、コンクールで優勝したの!」
「ほんまか、ようやったな」
「偉い? 凄い?」
「ああ! ええ子や!」
違う。ちがーう! 私は! 頭を撫でてもらいたいんじゃないの! 謙也に好きって言ってもらいたいの! 本当にわかってないんだからー!
「………」
「ちょ、どこに行くん」
「謙也の馬鹿ちん!」
もう! なんであんなに鈍いのよ! 私がこんなに頑張ってるのに…。
「毎度毎度、頑張っとるなぁ」
「謙也さん、モテたいモテたい言うとりますけどきちんとモテとりますやん」
「まあ、こういうん鈍いからな、あいつは」
なんて会話、私は知らないけど。私と謙也は2つ離れていて私は金ちゃんと弟の翔ちゃんと同じクラス、そりゃ年下で後輩だから仕方ないとは思う。
でも女の子扱いして欲しいし妹じゃなくてそういう対象で見て欲しいの!
「何や、また失敗したん?」
「うー、助けてよ翔ちゃん! 金ちゃん!」
「謙也、好きいうとったで?」
「本当!?」
恋愛に鈍感な金ちゃんがそんな事言い出して吃驚したけどそれが本当ならすっごく嬉しい!
「あんな、たこ焼きどっちが好き聞いたら好きいうとったんや!」
「何それー…」
期待させないでよね! そう思って頬を膨らませると翔ちゃんが笑ってるのがわかった。何か、翔ちゃん楽しんでる。
「自分から言ってみればええやん」
「私、から?」
「うちの兄貴アホやし気付いとらんとちゃうんか? そんなんやったらお前から責めればええやん」
あ、そっか。何で今まで気づかなかったんだろう。翔ちゃん偉い! 翔ちゃんにお礼を言ってからすぐに駆け出した。
「あのー、この体勢の事なんやけど」
「謙也!」
「な、何や!」
こうなったら突撃あるのみ! だって、謙也に好きと言ってもらいたい、謙也からしたら、迷惑かもしれないけど…好きなんだもん!
「私! 謙也が好きなの!」
「………」
言えた、やっと…素直に。心臓がどくどくしてるのがわかる、私が謙也に恋をしたってわかった時も……こんな感じだったの。
「俺もお前の事好きやで」
「え?」
「妹みたいに可愛い奴や」
ちっ、がーう! 何でぇ!? 何でそんなに、鈍いのよ!
「んっ…」
「っ、ふはっ」
「なっ…おま、何して」
もう、何で気づかないかなー。鈍感っていうか、ちょっと抜けすぎ。私だって、キスは初めてだし…それが私からなんて、恥ずかしいに決まってる。
「謙也が好きなの」
「………」
「謙也は私の初恋なの、謙也は…私の事嫌い?」
そう聞くと謙也は私の頭を撫でて強く抱き締めてくれる。答えが返ってこない、それが怖い。
「心臓、どや?」
「すっごく、速いね」
「そういう事やから」
どういう事よ、そう思っていると謙也の唇が目尻に触れて謙也が笑ってくれたのがわかる。
「謙也…」
「言われるまで気付かんとか、俺アホやな」
「うん」
「少しはフォローしてや!」
だって、私が謙也にアプローチしてきて何年だと思ってるの? 鈍いってところじゃないのよ! もう!
「もう一回、キスして」
「私から?」
「そっちん方が俺が喜ぶ」
意味がわかんない。でも、謙也が喜んでくれるならいっか…
「ん…」
「キスって、繋がってる感じがして気持ちええなぁ」
「謙也、私の事好き?」
改めてそう聞くと笑顔から一転真剣な表情、それに胸が鳴った。優しく笑ってくれる謙也は男の子って感じだけど、真剣な表情の謙也は男の人な気がする。
「めっちゃ好き」
心臓付近に耳を当てると聞こえてくる鼓動。トクン、トクン、私の心臓も同じように、繋がっているみたいに鳴り始めた。
それは多分恋ではなくて、愛の始まり──
高鳴る心臓が物語
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