ライオンに喰われそうな兎とはどんなものか想像してみる。兎はガタガタと怯えないだろうし危機感は感じていても表情は崩さないだろう。
そう、例えば今の自分のように──
「何考えてる? 蓮ちゃん」
「妙な名前で呼ぶな──……それから、俺の上から退いてくれると嬉しい」
「い・や」
こいつはただのクラスメートだったはず。それが何故こうして俺が組み敷かれているのか…理解出来ない。
クラスでは比較的大人しい性格だったはずだがこれは一体……。
「本当はそういう性格なのか?」
「本当? 柳君、何をもってして本当と言う言葉を使うの?」
そう聞いてくる彼女は子供のように好奇心で満ち溢れている、しかしその瞳は底意地が悪そうに光を帯びていて足が俺のそれを刺激していた。
「そ、う…っ、だな…」
「………」
「俺とお前はクラスメートと言う関係だ、お前とはっ……何もない」
冷たく俺を見据えるその瞳とは裏腹にその頬は軽く上気し彼女も欲情しているのがわかる。俺も男だ、さすがにそれを責められれば我慢出来ない。
「何故、俺なんだ?」
「柳君を選んだ理由? そんなの決まってるよ」
「是非とも……っ、く! データにしたい、教えて欲しいものだっ」
「ふふ、柳君っていっつも涼しい顔してるでしょ? だからこういう時にどんな表情するのか気になって」
それに、と続けて舌舐めずりをするその姿は官能的で思わず生唾を飲み込んだ。
「私、男の人の快楽に歪んだ顔大好きなの、部長さんと迷ったけど」
「そうするのが目的か?」
「そうするだけじゃつまらない」
この行為に楽しいもつまらないもあるのだろうか。そんな事を考えていると俺の制服のボタンが外されていく。ついにボタンが全て外され俺の上半身が露になった。
「柳君の身体って、美味しそう」
ヤバい、こいつは…色々と。そう思って力を振り絞り身体を動かそうとするが机に縛りつけられた縄は俺の腕に跡を残すだけだ。
「ふふ、柳君興奮してるんだ、可愛いね」
「……っ、何を」
そう呟けば彼女はおもむろに自分の制服のボタンを外していく。驚く事に彼女は下着をつけていなかった。制服がはだけ覗いた彼女の膨らみは形が良くピンク色のそれがそそりたっている。
「柳君にはもっと興奮してもらわないと…」
顔に胸が押し付けられる。息がしにくいがそれ以上に身体の異常な熱の上がり具合に自制が聞きそうにない。彼女は宣言したわりにただ俺の上半身を弄んでいるだけだ。
「っ、はぁ…」
「ふふ」
「いい加減に、しろ」
自分を見据える彼女の瞳が笑っている。まるでそうなるのがわかっているように、俺は彼女に踊らされている。わかっている、わかってはいるが──
「お前が欲しい」
「いい子だね、柳君…やっとおねだりしてくれた」
目許に唇は艶かしく歪んでいる。どうやら彼女は本気になってくれたらしく体勢を変えた。縄は近くにあったハサミで切られやっと自由になった。
「手は繋いだ方がお好み?」
「そうだな」
しっかりと結ばれるそれはまるで恋人同士の行為に似ている。実際それとは逆のはずなのだが。
彼女との行為は今まで俺が感じていたものとは全く違うものだった。未知のものと言うか…俺はいつの間にか全てを彼女に委ねていたのだ。
「………」
上半身裸の彼女は気だるげに瞳を閉じていた。さすがに疲れたらしいな。俺は起き上がり制服を直すと彼女の肩を掴んだ。
「何……んっ」
ガタリと机がずれる、抵抗しようと暴れる腕を取りもっともっと深く口づけていく。いや、これはキスと言うよりただ何かを貪ったような、そんな性行為──
「はっ……なに」
「責めるのは好きでも責められるのは駄目らしいな、頬が赤いぞ」
「離して」
離す? 今さらそんな事が出来るわけないだろう。俺はもう、お前に縛られてしまったのだから。
「お前の物になればお前は俺の傍にいるのか?」
「何気持ちよくなっちゃった? 自分から捕まりにくるなんて吃驚」
「マゾではないがな」
彼女の手が制服のネクタイを掴み引っ張る。俺と彼女の距離が近くなると彼女はクスリと唇を歪めて笑い俺の髪を弄ぶ。
「良いよ、飽きるまで遊んであげる……──でも飽きちゃったら、捨てちゃうから」
「子供を飽きさせないのは得意だ」
「じゃあ手始めに、足舐めて」
俺と彼女の奇妙な関係。支配と躯で結ばれた損得関係。それでも、彼女に求められるなら俺は彼女に支配されよう
最後のその日が来るまで──
いい子だね
0121
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