ここは氷帝学園、お坊っちゃまお嬢様が多いこの学校の部室…と呼ぶべきか迷うくらい広い部屋の中ではレギュラー達が集まって最後のミーティングが行われていた。
「ええか、お前ら…しくじるんやないで」
「わかってるって! 任せろ侑士!」
「頑張りましょう宍戸さん!」
互いが互いにに士気を高めるその輪には普段なら圧倒的なオーラと俺様具合を発するその人物が不在だった。
当たり前と言えば当たり前である、来るべきして来た今日は10月4日だからだ。このミーティングはそのための準備であった。
「じゃあ早速取り掛かりまましょう」
「おう!」
この日のために作ってきた紙で作った輪などを飾り付けていく、今日跡部の家で行われるというパーティーには負けるだろうが跡部を除くレギュラー達で精一杯作ったものだ。
「あーん? まだ部室の灯りがついてるじゃねぇか」
「おい! 来たぞ忍足!」
「はいはい、わかっとるわ…」
跡部が来た時の制止役として忍足が出る事になっている、忍足は肩を竦めて跡部を制止するため部室を出ていった。
「んー、あれー? 皆何してんのー?」
「ジロー、今日は跡部の誕生日だろ」
「うわ! そうだったC! 俺も手伝う!」
「馬鹿ジロー! 声が大きいっての!」
部室内でジローが起きたためちょっとした騒ぎになってしまった。もちろんその声は外にまで響き渡っている。
「何やってんねんあいつら…」
「おい忍足、お前そこで何やってる」
「ん? ああ、ちょっとあってな、跡部はどないしたん?」
話題を逸らすと跡部が訝しげに眉を潜めたのがわかりつい口から苦笑いが零れてしまう、跡部にも先程の声は聞こえていたらしく騒がしい部室をチラリと見ていた。
「あいつらまだ残ってやがんのか?」
「ちょっと今取り込んでんねん、もうちょっと待っててくれへんか?」
「たっく、仕方ねぇな…」
跡部の行動はいつも突拍子で皆を驚かせるがそれ以上に1人1人をきちんと見ておりついてこない方が可笑しいくらいに部員を引っ張っている。
レギュラー達も文句を言いながら何だかんだでついてきているのだから器が大きいのだろう。
「ちょっ、向日さん、飛ばないで下さい」
「へへ、良いじゃん良いじゃん……あ」
「おい向日! 何やってんだ!」
更に酷くなっているのは気のせいではない、忍足が思わず頭を抱えている間に跡部は部室の中に入ろうとしていた。
「ちょっ、跡部! 待ちぃな!」
「お前ら、何してやがる」
「あ…」
部室は一瞬しん…と静まりかえる、跡部は不思議そうに「あーん?」と言ったがレギュラーはポカンとしていた。
「な、何やってんだよ侑士!」
「跡部、部室から出ろ!」
「あーん? 宍戸、お前誰に命令してんだ?」
「ああもう、樺地! 跡部のためや! 協力してくれ!」
忍足が外で待機していた樺地にそう言うと樺地はしばらく何の反応も返さなかったが「うす」と呟き跡部の目を隠そうとする。
「おい! 樺地、どうした!」
「よっしゃ、今のうちだ!」
樺地が跡部を抑えつけている間に皆で協力して何とか速攻で飾り付けを終わらせる、それから近くのケーキ屋で買ってきたケーキを机の上に乗せた。
「樺地、もうええで」
「っくそ、お前ら樺地まで巻き込んでどういう…」
目を開けた跡部は目の前に飛び込んできた光景に唖然としたらしく黙ったままだ。それに周りは笑うと持っていたクラッカーを鳴らす。
「跡部さんの家のパーティーには劣るかと思いますが…」
「せっかくここまで用意してやったんだから感謝しろよな」
「誕生日おめでとさん、跡部」
「たっく、こいつらは…」そう心の中でそう思うとフッと笑う。
「はっ、俺様のためにとはずいぶんなサプライズじゃねぇか」
「……本当に偉そうですね」
「ま、まあええやん…じゃあ乾杯するで」
ジュースを紙コップに注ぎ入れ掲げる、レギュラー達も続けて紙コップを掲げた。
「跡部誕生日おめでとう!」
「……ふん」
跡部にとって安物のジュースも安物のケーキも、紙で作られた飾りも大したものではなかったが家で行われるパーティーよりこっちの方が数十倍楽しかったのは確かだった。
跡部の誕生日と聞いて一番最初に浮かんだ光景
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