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些細な願いさえも (1/4)


悠凪が完全に回復したのは、俺の家で過ごす様になって1週間後だった。

もう回復したからと寂しそうに呟いた悠凪は、ニコリと笑った。

つまり、ここからいなくなると言ってるんだと思う。行く宛もなく、エクソシストやルシファーにも狙われている。そんな状況なのに、俺等を心配する悠凪に頭を抱える。



「悠凪は、俺等といたくない?」

「みんな…あたしといると危ない」

「…いつも悠凪が助けてくれたじゃないか。それに危ない目に遭ってるのは悠凪だろ?」

「んっ…あたし?」

「悠凪は、俺が怪我したらどう思う?一人で危ないところに行くって言ったらどうする?」

「ん、精市が?あたしが守る…ひとりで行かせないよ?」



やっぱりなんていうか…ちょっと色々と意識の差というか、悠凪には色々欠落してる部分が多過ぎてこういう時に困るな。

まだ俺の指示には素直に従うから救いだけど。

なにも言わなかったら勝手にいなくなってただろうし。本当に放って置けない子だな。

これで400年も生きてるって言うんだから不思議だよね。まぁ、色々あって記憶が曖昧だから仕方ないんだろうけど…ヒストリーログで見た昔の悠凪は、今みたいな感じではなかったし。

もう少し威厳があったというか…



「…精市?」

「俺もね、悠凪と同じなんだよ」

「あたしと…同じ?」

「正直、俺は悠凪より弱いし…悠凪を守るなんて大それた事は言えない。だけど、出来る事なら悠凪を守りたいし、一人にしたくない」

「んっ…でも…あたし」

「悠凪が俺等を大切に思ってくれてるみたいに、俺も悠凪が大切なんだよ。わかる?」

「ん、んっ…うん。ごめん…ね?」



俺が怒ってると勘違いしているのか悲しそうに小さく頭を下げる悠凪は、まるで叱られた子供のように俺の顔色を伺うように顔をあげた。

ふふ、全く可愛いなぁ。

これがあの最強と噂される真祖の吸血鬼って言うんだからおかしな話だ。普通なら俺が頭を垂れて命乞いをするレベルなのに、悠凪が俺に頭下げちゃってるし。

不安そうな顔をしている悠凪の頭を優しく撫でると怒ってない事がわかったのか嬉しそうに目を細める悠凪は、まるで猫みたいだ。



「悠凪、おいで」

「ん、だっこ?」

「うん、ほらおいで」

「んっ…精市、あったかい」

「ふふ、そう?それで悠凪は、まだここからいなくなるって言うかい?」

「…ん、いわない?」

「ふふ、いい子。大丈夫、きっと…大丈夫だから」



正直、悠凪を匿うのは俺にとってもかなり危険な事だ。

死神の最高位とはいえ…悠凪は真祖の吸血鬼な上にルシファーの血を半分持っている。そんな悠凪を匿ってるとなれば、問題になるのは目に見えてる。

それに真祖の吸血鬼やルシファー等の特別上級悪魔はエクソシストだけでなく、俺等死神にとっても邪魔な存在だ。


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