…面倒くせぇな。
２階の探索に来たのはいいが、廊下を這い回る音に部屋から出れずにいる。

つーか、あの化物は１階にいるはずじゃなかったのかよ。



｢で、ずっとここで隠ってる訳にもいかねぇんじゃねぇの？｣

｢どうしますか、花宮さん｣

｢…チッ、もう少し待ってろ。後１回、あの化物がこの部屋の前を通ったら話す｣

｢なら、俺はもっかいなんかないか探すわ｣

｢あぁ。赤司はそれ読んでろ。で、根武谷テメェは大人しくしてろ｣

｢わかりました｣
｢へいへい｣



フルに頭を回転させて、這い回る音だけを頼りに化物の行動パターンを読む。

…約５分で、片道２分半。
速度としては、かなり遅めだが…今はただ徘徊してるだけで、俺等を見付けたらさっき前ん時みてぇに速度が上がる可能性も考えると、鵜呑みには出来ねぇな。

それにこっち側の廊下だけを徘徊してる辺り、俺等がいる事に気付いてる可能性が高い。

…幸い、ここは階段から２番目の部屋だ。先に奥に行かなくて正解だったか。

とりあえず、次にこの部屋の前を通った…130秒前後に部屋から出れば、化物は廊下の１番奥にいるはずだ。

だが、少し気になるのが２つ奥にある部屋辺りで化物が少し足を止める事だ。バラつきがあって正確な時間はわからねぇが、少なくとも10秒は足を止めてるのは確かだ。

赤司か、ザキか…いや、俺だな。

赤司もザキも英語以外は読めねぇし、化物の対処は出来そうだが…それなら根武谷の方が対処出来そうだしな。



｢…チッ。おい、一旦戻るぞ｣

｢何かわかったんですか？｣

｢いいから聞け。俺が合図したら部屋から出て、お前等は一気に地下室まで走れ｣

｢…お前等は、って花宮はどうすんだよ？ まさか残るとか言わねぇよな｣

｢…チッ、２つ奥の部屋が気になんだよ。化物がお前等を追ったら、部屋を見てくる。追わなかった場合、俺も地下室に戻る｣

｢なら俺も残るっつーの。花宮だけ置いて来たとか言ったら、千夏に殺されかねねぇよ｣



…さすがに千夏も逃げて置いて来たとかじゃねぇ訳だし、キレたりはしねぇだろ。つーか、この場合は１人の方が行動しやすいんだよ。

それに囮は１人でも多い方がいいんだよ。そっちに釣られてくれた方が、俺としてもかなり動きやすいからな。

とりあえず、ザキが不満そうな顔をしているが却下だ。それに別にただ様子を見に行くだけで、無理そうなら素直に地下室に戻るっつってんだろ。

別に俺は、誰かの為とかじゃなく自分がここから脱出する為に動いてるだけだからな。そもそも、ラテン語やフランス語が読めるのが俺だけじゃないなら、そいつにに任せて俺は地下室に戻るしな。

面倒くせぇし。


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