しぐれの潜伏先は江戸らしい。

鳳仙も隠居して江戸にいる。
まるで師のあとを追っていったような気がして気に入らない。

あれから第七師団は相変わらず戦三昧だ。

でも何かが足りない。
どうしようもなく渇く。

今度の任務は吉原に出向かなければならないらしい。
頭の使う任務はどうにもやる気が起きない。

「珍しいこともあるもんだ。団長もついてくるたぁどういう風の吹き回しだ?」
「偶にはいいじゃないか。」

なによりしぐれに会える。

「下手なことだけはしないでくれよ」
「もちろん。邪魔はしないよ」

江戸に着くと真っ先にしぐれの元へと向かう
既に現住所は特定済みだ。

江戸の郊外、寂れた村で一人暮らしているらしい。
その村のさらに少し外れたところにしぐれの現自宅はあった。

戸を叩く

真昼間ということもあるからだろうか、返事は無い。
中に人が居る気配もない。

「おやおや、しぐれちゃんの知り合いかい?あの子なら今出かけてるよ」

たまたま近くを通りかかったお婆さんはそう言った。

「どこに行ったか知ってますか?」
「さあねえ?目が悪いんだからあんまり一人で遠出しちゃダメよって言ってるんだけどねぇ…」

どうやらここらではそれなりにうまくやれているらしい。
ほんの少し安心したが、やはり本人に会いたい。

「あぁ、そう言えば!ほらあそこにちょっと小高い丘があるでしょう?
お気に入りらしくてね、よく行ってるみたいなの。もしかしたらそこにいるかもしれないわね」

ここからだと少し距離はあるが、一人で行けないことはないだろう。
お婆さんに礼を言って丘の方へ向かう。

丘の上には何もなく、ぽつんと傘だけがそこにあった。

「来ると思ってたよ。春雨の雷槍、第七師団団長さん」
「さすがしぐれ。よく知ってるね」

あんだけ宇宙で大暴れしてるんだから
耳にしない方がどうかしている。

「相変わらずってところ?」
「まあね。しぐれも元気そうでよかった。」

久しぶりの再会だからだろうか、それとも着物姿だからだろうか
現役の頃とは違った、落ち着いた大人の雰囲気があった。

「そりゃどうも。ここに来た理由は何?殺しに来たって感じじゃないけど」
「何でも知ってるしぐれなら、それくらい聞かなくても分かってるんじゃないかな」

鳳仙の旦那に会いに来たのさ。

そう適当に答える。

「師匠にねぇ…わざわざそんなことするようなたまじゃないでしょ。大方手合わせしに来たとか。」

なるほど、それも悪くないな。
そう思ったがそれに関しては何も答えなかった。

しぐれに会いに来たと言っても多分信じてくれないから。

「じゃ、また来るよ」

会ってわかった。
しぐれがいるだけでホッとする。
何だってできる気がする。

「団長、戻ったか。」
「うん。さて、行こうか。」

最終的に吉原の管理は第七師団に委ねられた。
だがそんなことはどうでもいい。

「ねえ阿武兎。やっぱりしぐれを連れ戻そうと思うんだ」
「そういうとは思ってたが、連れ戻すなんてそう簡単じゃねえよ」
「そんなことは知ってるよ。でも海賊王になるにしても、しぐれなしじゃあね」

物足りないのだ。
だから連れ戻す。

至って単純で自己中心的で我儘だ。

「だから定期的に江戸に行くことにするよ」

- 11 -


[*前] | [次#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -