焼き払われていく大事なモノを背に


男は一件の家に入ると
油を持ち出し、村中にまいて火をつけた

火は忽ち村中に広がっていく

「これで君がここにいる理由はなくなった」

少女はただ燃え続ける村をじっと見ていた

「さあ、行こうか」

男は少女の手を引き歩いて行く

「そういえば、君名前は?」
「……しぐれ」

初めて聞く声はよく澄んでいて
大人びていた

よくみれば
童顔ではあるものの
どちらかと言うと男と同じくらいの女だった

今だ燃え続ける村を背に
二人は歩いて行った


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