大丈夫と言った笑顔は一瞬にして


帰る場所などない
そうわかっていても少女は一歩も動こうとしなかった

「大丈夫。悪いようにはしないから」

そう言った男は少しだけやわらかい表情をした
そしてグイっと無理矢理少女を立たせた

「君がなんでここに固執するかなんて知らない。でも、ここに居ても何も変わらないんじゃないかな」

この村には善も悪も入り混じった場所
それでもわりと平和な場所だった

「君もわかるはずだ。本当はここじゃなく戦場で生きてかなきゃいけないことを」

少女は否定を続ける

「君の中にもいるはずだ。血を求める獣が」

少女は僅かながら反応した
わかっているのだ。自分もそうだということに
しかしそれを認めようとしないのだ

それに追い打ちをかけるかのように男は言う

「それともこの村さえなくなれば君は一緒にきてくれる?」

少女はその問いに答えなかった
男はまた冷酷な笑みを浮かべた


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