貴方はまた大声で愛を叫んでる


それから数日。
やっぱりあの子といる

というか、最近わざとやってるんじゃないかって思ってしまう
だってその子とよく目があうんだもの
知っててやってるよ、絶対。

「しぐれさん」
「…はい?」

ある日のことだ
その取り巻きの女の子に話しかけられたのは

「はじめまして、桜庭凛と言います」

ペコリとお辞儀をされたものだから
多少どころじゃなく戸惑った
だって、こんな律儀に挨拶されたりとかしないし…

「あ、どうも、はじめまして」

え、これ、どうするべきなんだろう?
困るんだけど

「あー、えっと。なんかありましたか?」
「いえ、ただ臨也さんの彼女さんってどんな人なのかなって思ったので」

ニコニコと笑ったまま
彼女は言った

「でも大したことないみたいでよかったです」
「…はあ?」

何を言ってるんだこの子は
私は思った

「しぐれさん、気づいてるんじゃないですか?私が臨也さん狙いなのわかってますよね」
「…。だから?」
「そんな態度だからいけないんですよ。まあ、私はしぐれさんに宣戦布告しにきただけなので」

どこまで自信家なのか、この子は
というか、まあ、仕方ないのかな。
私がこんな性格なのがいけないんだもんね

「…そ、う。勝手にすれば?」
「ホントに素直じゃないんですね。言われなくてもそうしますよ」

一瞬背筋が凍るような、冷たい笑みを浮かべると
また先ほどの顔に戻っていた

「しぐれ?」
「いざ、や…」

なんでこんなタイミングでくるんだ。
ずっとみてたんじゃないかと疑いたくなる

「おや、また君かい?用でもあった?」
「あ、はい。ちょっと話しづらいことなんですけど…」

チラリとこちらを見てきた
私が邪魔だ、と言いたいのだろう

「私、先帰ってるから」

二人に背を向けて私は歩き出す


貴方はまた大声でを叫んでる
(私のじゃない名前と一緒に)
(ねえ)
(ウソだと思わせて)



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