四角い世界


自室に戻ると両親の顔があった。
この時間に何処に行っていたのかと、問いただされた。
寝付けなかったので散歩に行っていたと言い張りはしたが信じてくれた様子はなく
今後の一人での外出禁止だと言い残して出て行った。

きっと昼夜問わず言っているのだろう。
夜はもう出る気はなかった。
彼がダメだと、そう言っていたから…。

それにしても今日は家の雰囲気が物々しい気がする。
何をそんな怖い顔をしているのか…。

「あの、何かあったんですか?」
「あ、あぁいえ、急に来客の予定が入ったもので。くれぐれもお嬢様は明日、部屋から出ないようお気をつけくださいませ」

恭しく頭を下げると、使用人はそそくさと歩いていった。

今までも来客がある時はそう言われていたが
昨日の事もあるのだろう。
自室に戻ってもする事はなく、ただぼんやりと庭を眺めた。

翌日、日が暮れた頃
家の中の空気が変わった。
ぴりぴりとした空気に包まれていた。

言い知れぬ不安が襲う。
良くない事が起きる気がしてならない。

きっかけは1発の銃声だった。
乾いた音が耳に届く。
それを皮切りにバタバタと足音が、悲鳴が、銃声が聞こえてくる。

何が起こっているのかは分からないが
今自分がいる部屋にももう時期魔の手が襲うだろう。

恐怖で震える身体を必死に落ち着かせようとしていると
勢いよく部屋の襖が開いた。
そこには命からがら逃げてきたのだろう使用人がいた。

「…!その怪我、早く手当をしないと…!」
「駄目です。早く…早く逃げてください。時期に奴らが来ます」

伸ばした手を使用人は振り払い逃げろと言う。

「そんな…逃げろって、何処に逃げろと言うの…」
「私にもわかりません。ですが、旦那様がお嬢様をすぐ逃がせと」

早く

そう急かされ、否応なく背を押された。
何処に逃げれば良いのかわからないまま、私は裏口から逃げ出した。


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