届かぬ名を呼ぶ


あれから幾日が過ぎた。
あの日以来地球には行けないでいる。

宇宙の景色はいつ見たところで何の代わり映えもしない。
ただただ退屈な日々の繰り返しだった。

任務も何もない時、気づけば彼女のことを考えていた。
しぐれは元気にしているだろうか?
夜桜の下で笑う彼女の顔がちらつく。

何もすることがないし、彼女のことを調べてみようか?
柄にもなくそんなことを考えた。
名前しか知らないのに何から手を付ければいいのかはさっぱりだが…。
たまには自分でどうにかしてみよう。

調べ始めて数時間
思いの外いろいろ分かった。

どうやらあの桜並木も含めた地域一体の土地所有者
俗に言う地主の一人娘らしい。
アルビノという特異な体質に生まれたせいか、はたまた一人娘なせいかはわからないが
文字通りの箱入り娘だとか。

あの時会えたのはかなり運が良かったのかもしれない。
一人で外出させることはかなり少ないらしい。

そこまで詳細に書かれた書類が出てきたのも地主の娘だからだろう。
何度か春雨側が接触したらしい。
立地的に利用できるという判断、そして娘の存在。
強請ろうと思えばその材料として使える。

「何処にいるかと思えば、珍しい場所で仕事とは驚いた」
「仕事するほど俺も暇じゃないよ」
「こっちは仕事してもらわねえと困るんだがな」

これ以上しぐれの事を調べても出てこないだろう。
キリもいい所ではあったので出してた書類を仕舞って部屋を出た。

「何をしてたか知らんが、あんまり変なことはするなよ?」

元から変なことをするつもりはないけど。
そう言い返すことはせず、次の任務場所へと船の行き先を変えた。


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