一年後 月曜日


今日は満月らしい。
偶然江戸に来ていたので、彼女と出会ったあの公園に行ってみることにした。

あれから約一年。
連絡が取れるような場所ではないから、ただひたすら待つだけの毎日。

あの時は本当に驚いた。
つい後を追って声をかけてしまうほど母に似ていた。

落ち着いた雰囲気の彼女は、一緒にいるととても落ち着いた。
出来る事なら、ずっと一緒に居たいと思うようになるのに、時間はかからなかった。

ぼんやりと満月を眺めていると不意に後ろから淡い光が漏れだした。
振り返ると丸窓が開かれるところだった。

淡い光を背に現れたのは着物を少し崩して着用した黒髪の女性。
紛れもなくしぐれだった。

「おや?随分と驚いた顔をしているね。」

控えめに笑う彼女は、月の下で見ているせいか妖艶だった。

「そりゃ驚くよ。元気そうではあるけど、ここに来て大丈夫なの?」
「大丈夫。もう心配かけたりしないよ。色々と手間取ってしまってね。」

そう言うと懐から何やら淡く光る石を閉じ込めた小さな器具を取り出した。

曰く、中に入ってるのはアルタナの結晶石であり
小さな器具はそのアルタナの力を増幅させる装置らしい。

それを一年足らずで彼女は作り上げたという。

「本当はもっと早くこちらに来る予定だったんだけど…。これだってまだ未完成なのよね…。」
「そう…。じゃあすぐ帰るんだね。」
「いや?未完成ではあるけどこれだけで一応ひと月くらいはいけるはず?」

すごく曖昧ではあるがそれでもかなり自信があるらしい。
表情がそう物語っている。

「約束通り、私は使われに来たんだから、そんなこと気にしてたらダメよ。
月の事が知りたいならいくらでも教えてあげるし、技術が欲しいならいくらでも。」

何を要求する?
そう問われれば答えは一つ。

「全部だよ。しぐれの持ってる知識も、技術も、全部ね。」


満月の夜に
(父と同じ轍は踏まない)
(そう誓って)



*true end*



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