桃色キャンディとほろにがキャラメル


翌朝

目覚ましを付け忘れていたが自然と目が覚めた。
習慣として体が覚えているらしい。
寝坊することなく昨日と同じように家を出た。

今日はよく晴れている。
休みであれば洗濯物や布団を干すのに丁度良かっただろう。
街を歩くと水撒きをする人をちらほらと見かけた。

セッティングの方は少しトラブルが起きていた。

「どうしてこう、お偉いさんは我儘な人が多いのかしらね。」

手帳にやることをリスト化し記入していく。
場所は何とかなるが警備的人員等々、
やらなければいけないことはまだまだ多い。

「そんな怖い顔してたら、お巡りさんに目を付けられますぜ。」
「職務怠慢なお巡りさんに言われても説得力がないわ。」

子供たちが水遊びをしているのを横目に、
公園のベンチに腰を掛ける。

「別に毎度毎度サボってるわけじゃないんですかねぃ。」
「そう。今日は何かしら?公園の警備?」
「いやいや、ただの配達でさぁ。あんたに。」

ベンチの間に差し出されたのは小さな紙袋。
手帳から目線を外し沖田の顔を見る。

「これは?」
「こう見えて、義理堅い性分で。先月の礼でさぁ。」
「あぁ、バレンタインの…。別に気にしなくてもよかったのに。」

でも、ありがとう。
気持ちはありがたく受け取ることにした。

「配達って仕事は終わったし、本業の方に戻ったら?」
「ま、あんたがヘマしてくれたら仕事できるんですがねぃ。」

僅かに眼光が鋭くなったが気にすることもない。

「私が何かお巡りさんのお世話になることなんてしてたかしら。」
「すっとぼけるなんて往生際が悪いと思いますがね。
ま、根拠もなけりゃ証拠もないし、お巡りさんの勘ってとこで。」
「そう。私はそろそろ仕事があるから行くわ。」

まだ何か言いたげではあったが振り返ることはしなかった。
そろそろ次の会議の時間になる。
足早に公園を後にした。


一つの会議で数時間かかるのはいかがなものか。
そう思いながら茶屋に入ると、見知った銀髪が目に入った。

「あれ?銀さんじゃないですか。」
「おう、珍しいな。また仕事か?」
「いえ、ちょっと休憩しようと思って。」

ま、今日はホワイトデーだし俺が出してやるよ。

「パチンコか何かで大勝ちしたってところですか?」
「まあな。」

珍しいしお言葉に甘えることにした。
どうにも今日はよく知り合いに会う。

「そういや、最近神楽が会いたがってたな。」
「あー…まあ、色々ね。仕事が立て込んでて予定が合わないの。」

バレンタインのあの一件以来、どうにも顔を合わせずらいく思い、
自然と顔を合わせないようにしていたのも事実だ。
だが、その頃から春雨側からの仕事の依頼が
かなりの頻度で入るようになっていた。

今回の件もその絡みではある。

「ま、たまにでいいから遊んでやってくれや。」
「そうね、まあ仕事が落ち着いたらってところかしら。」
「そんだけ仕事があるんなら、分けてほしいくらいだ。」

私の仕事は銀さんじゃ出来ないよ。
今日はご馳走様。

それだけ残して先に席を立った。
一人になって息を抜きたかった。

ふと時間を確認したら春雨側のお偉いさんとの会食の時間だった。
急いで待ち合わせ場所へ向かう。
遅刻はおろか、向こうより遅く着くのはまずい。
できる限り早く歩いて向かった。

とある座敷の最奥で顔を合わせた。
相変わらず何を考えているのかはわからない。

「江戸での仕事ぶり、相変わらずのようだな。」
「お褒めいただきありがとうございます。
しかしながら、今回少しお相手方から要望がありまして…。」

数日前の打ち合わせで言われた要件を打診する。
日程の前倒し、それと

「今回相手様の方から犬の手配は出来ないと、突然仰られまして
こちらの方から手配は出来ないでしょうか…?」
「ふむ…その件に関してはこちらで何とかしよう。」
「ありがとうございます。」

時計の針は進み、お酒も大分進んでいた。
チラリと見たところでは20時を回っていた。

あの手紙では17時だったがどうにも気になる。

「頻りに時間を確認してるようだが、何かあったか?」
「あ、いえ…大した用ではないので…。」

暫く黙り込んだが、先鋒の計らいでお開きになった。
お偉いさんの背中が見えなくなるまで見送り、漸く今日の予定は終了した。

あの一件を除いて。


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