アカアシモリフクロウ | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
「…なんか苦手なこととかないの」
「なんですか、急に」

急ピッチで、支度をしていた。一緒に住むための準備を。
引越し当日は大型インテリアショップに2人で出向いて、必要最低限の家具を買って2人で組み立てて。説明書すらまともに読めない私は完全に邪魔でしかないが、彼は淡々とそれらを組み立てる。

「だいたい、こういうのは男の方が得意なもんですよ」
「ちょっとくらい苦戦してほしいよ、こちらとしては」
「そうなんですか?」
「赤葦くんって欠点とかないの」

はぁ、と困った顔の彼。こちらの相手をするのさえ面倒くさそうで可笑しくなる。やっぱりないんだな、欠点。

「ないんだ」
「ありますよ」
「なに」
「つまらないじゃないですか、俺」
「はぁ?」
「昔の彼女によく言われました。つまんないねって」

そう言いながら彼はドライバーでぐりぐりとネジを締めていた。こちらがサボっていることには触れてこないので、もう私を戦力と捉えていないのだろう。

「つまんないかな。結構面白いけど」
「そんなこと言ってくれるのなまえさんくらいですよ」
「赤葦くん、猫かぶるから」
「そんなのなまえさんもでしょう」

こうやって表情を変えないのがつまらないと感じさせるのだろうか。私はぎらりとする彼を知っているからこの状況も面白くて仕方がないと思うのだが。

「組み立てるの疲れない?」
「疲れます。やめたいです」
「休みなよ」
「ベッド完成しないと眠れないじゃないですか」
「ソファでいいじゃん」
「1人しか眠れないでしょう」

いい指だ、と惚れ惚れする。第一関節と第二関節がごつりとして、程よく長く男っぽいそれ。じぃとつい見入ってしまえば、気付いた彼に指摘される。

「…そんなに見ないでください。さすがに照れます」
「あ…ごめん、」
「早く組み立てますから。もうちょっと待っててください」
「ごめんね、役に立たなくて」
「飯食いたいです」
「…なに、急に」
「なまえさんが作った飯、食べたいです」

だめですかって首を傾げる男はやっぱりあざとい。はぁ、と溜息をついて、笑って。

「何が好きなの?」
「和食がいいです。後は任せます」
「私、そんなに料理上手くないよ」
「いいんです。なまえさんが作ったのが食いたいです」

ふわり、と笑うからどきりとしてしまう。こんなに微睡んだ顔もするんだって、とても嬉しいのだ。あぁ、こんな顔をした。こんなことを言ってくれた、って新しく見つける彼は新鮮だから。

「棚も組み立ててね」
「はい、がんばります」
「買い物行ってくるから」

真新しい、汚れなんて一つもないキッチンで何を作ればいいのかさっぱりわからなかったが、とりあえずやってみよう。彼がそれを望むのなら、そのくらい容易いことだった。

2016/03/13