6 「お前…ここもクラス別で場所違ったろ」 「いや俺B組だから」 「あ、静雄も臨也もおはよー。昨日は激しかったようだね」 「うん!シズちゃんったらなかなか寝かせてくれなくて」 「やめろ、誤解を生みかねん」 あれから次の日、いつの間にか俺は眠っていて、臨也も姿を消していた。 平和学習は沖縄に修学旅行に来るメインだろう。戦争のキズアトとかいうものに触れるっていうけど、高2の俺達からしたら結構酷な事だよな。あんなにテンションが高かったクラスの男子共も、リアルな戦争の体験談を聞かされて落ち着いたのか「この時代に生まれて良かった」と真面目な顔して口を揃えて言う。別に悪い事じゃねぇけど…なんか変っつーか、まあ、それが目的なんだろう。 俺達は次の目的地のためバスに乗り、俺が一番奥の窓側の席に座ると、当然かのように臨也は隣に、新羅は臨也の隣の真ん中の咳に座った。疑問を抱くのは俺が間違ってるんだろうか。 「たとえ静雄が兵士として戦争に駆り出されても普通に無傷で帰ってきそう」 「日本の夜叉とか鬼神とか言われそうだよね」 「手前らは変わらねーんだな…分かってたけど」 「?…いやでもシズちゃんが戦争行ったら俺堪えられないから!行かないでね?」 「いや行かねーから…」 まあくそ真面目に語られても俺が困るからな。こいつらが異常人格で助かった。俺珍しく奴らの事誉めてる。 「次は自然壕の見学だって」 「壕ってなんだ」 「戦時中に身を隠す為に使った洞窟みたいなものだよ。言っとくけど真っ暗だからね。ほら、懐中電灯が持ち物にあったでしょ」 「あー…だからか…」 ぞくり、背筋が凍るような悪寒がした。決して、真っ暗とか、そんなのが怖いだなんて。 「……シズちゃーん」 「!…な、なんだ、」 「俺懐中電灯忘れちゃったんだよねー…だから、一緒に行こ?」 「…………勝手にしろ…」 「お?」 バスから降りると、地元のガイドの人が自然壕の入り口でB組を待っていた。各々懐中電灯を点け、そろそろと入っていく。俺が入るのを躊躇っていると、新羅が俺の背中を押して危うく岩に頭をぶつけるところだった。 「てめっ」 「まあまあ早く進まないと後ろつっかえてるからさ…」 「しゅっぱーつ!!」 そんな気楽に進むもんじゃねえだろここは…。ていうかノミ虫は一緒に行くとか言いつつ勝手にどんどん進みやがって…。 「おま、そんな早く」 「でぇっ」 「ちょ…っ」 ノミ虫が間抜けにも足元の石につっかえて転びそうになったので(懐中電灯忘れたからだバーカバーカ)、腕を奴の身体に回して支えてやった。別にこのまま転ばせて頭から血流してさっさと池袋帰っても良かったんだが…なんで俺…。 「…だ、大丈夫か?」 「………うん、ありが、と」 奴の細い身体から腕を離して手を掴んでやる。また転ばれても面倒くさいからな。それに一人でどんどん進まれても俺が怖…いやそんな事はない。断じてない。 しばらく歩いても、ノミ虫は喋そうとしない。いつもはうるさい位に俺に絡みついてくるのに。 「静かだな…手前」 「へっ?あ、そうか、な?シズちゃんこそなんか名前の通り静かだね。もしかして怖いのかな?」 「……黙ろうか臨也君?」 そう言いつつも手が離せないのは、決して怖いとかそんな理由からではない。 ((さっきからなんで俺はこんなに緊張してるんだよ…)) ------------ 平和学習なのにこいつらお互いのことしか考えてないごめんなさい。 平和島学習に見えたそこのあなた、結婚してください。 |