4 「綺麗な物を見ると邪な心が浄化されるよね」 「自然の美しさや情緒を観賞する…嘯風弄月とはこのことかな」 「お、新羅が急に四字熟語使い始めた」 「……じゃあ手前らの心は消えてなくなるのか」 そういやここの水族館、臨也が持ってた雑誌に載ってたな。日本最大の水槽があるんだっけ?ジンベエザメがいるんだっけ?そんな感じの。 「…やっぱり池袋の水族館とは違う気がするのは気のせいじゃないよね」 「なんか懐かしいな…昔良く行ってたわ。弟とマンボウ見た記憶がある」 「あは、そんなの居たっけ…」 途端、巨大な鮫が俺たちの真正面を横切った。 ふと2人に視線を下ろすと、臨也も新羅も口をだらしなく開けて水槽を食い入るように見つめていた。こいつら黙っていれば少しは可愛いのに。本当に、黙っていればの話だが。 「…この感動を是非ともセルティに伝えたい!」 「!新羅それ」 「んん?」 「カメラだ!どうして今まで言ってくれなかったんだよ!」 「ええ…わざわざ俺の持ち物を君に報告しなきゃいけない訳?」 「撮ろう撮ろう!」 デジカメを持ってきたらしい新羅にノリ気な臨也。早速カメラを取り上げ電源を入れた。 「他にも何か撮ったのある?」 「出発前にセルティの写真を30枚ほど…ほらこれとこれがお気に入りなんだ。可愛いでしょ?」 「ち…違いが分からん…あ!ドタチン!」 新羅の語りが始まる前に、運良く門田が俺たちの前を横切った。 「あ、ああ…臨也か…、つかその呼び方止め」 「これで俺たちを撮ってよ!」 「…はあ、まあ、いいけど…」 「あとでドタチンも一緒に写ろうね」 「遠慮しとくわ」 ぽん、と臨也が門田にカメラを渡したのをぼーっと見てると、臨也が俺に手招きをした。 「は?俺も?」 「何のためにドタチン呼んだんだよ」 写真とか、あまり写りたくないんだけどな…こいつらみたいに上手く笑えないし。でもニコニコしてる臨也と新羅を前にすると断れないっつーか…。 「じゃあ行くぞー」 臨也の手が俺の腕に絡んできて、ピロリンとシャッター音。ぶっちゃけ写真どころじゃなくなった。コイツの無意識のスキンシップには心臓が保たない。なんでか知らないが。冷静に取り繕ってるつもりだが内心穏やかじゃないのは内緒だ。言ってやるものか、絶対馬鹿にされる。 「はいよ、ブレてたらすまん」 「あ、大丈夫かな、ありがとう門田」 「よし、じゃあ次俺とシズちゃん撮って!ね、シズちゃん」 「え、手前となんて無理」 「否定早っ」 臨也の手を思いっきり振りほどき俺は歩き始めた。なんでなんでと駄々をこねる臨也は無視だ無視。 「やだやだシズちゃん…!」 「臨也ドンマイだな」 「うわああんドタチンのバーカバーカ!!」 「なんでそうなる!」 「あははっ」 「死ね新羅」 ああくそイライラする。 新羅の扱いは愛 |