3 世の中金で解決することなんて多々ある。むしろ金で解決しない事なんて無い位に。 「……あれ、飛行機の座席もクラス別じゃなかったかな。おかしいね、今いる席がどこのクラスのか確認しようかクソノミ虫が」 「平気だよ、君と新羅の間に座る予定だった男の子は元俺の席に座ってるから。その子も“あの喧嘩馬鹿と変人眼鏡に挟まれるよりはマシだ”と快く席を交換してくれたよ」 修学旅行がクラス別行動だと気付いた時から今日まで、俺はシズちゃんと全ての行動を共にすべくありとあらゆる計画を立ててきた。朝の空港までのバスは想定外だったが…それこそ飛行機の席から部屋割りまで金で買える物は全て買った。 それもこれも愛するシズちゃんと一緒にいる為…俺はどんな事でもするよ! そうこうしている内に、飛行機は離陸する準備が終わり、いよいよ空へ飛んだ。わあ、と辺りから小さく歓声が起きる。 飛行機なんて何年ぶりだろうか。昔家族でどこか旅行に行ったっきりだなあ、とぼんやりと考えていると、俺の右隣のマイダーリンは耳を塞いだり頭を掻いたりせわしなさそう。 「あぁー…くそ、耳いてぇ」 「シズちゃんって気圧の変化に弱いんだねぇ。降りる時の方が大変かもしれないよ」 「まじか…」 困ったような表情を浮かべるシズちゃんも大変可愛らしい。 喧嘩が強い来神最強が気圧に弱いった時点で既に可愛いんだけどね。 普通はここで左隣の医者の玉子が耳やら気圧やらに関して頼んでもいないのに豆知識を披露してくれそうな気がするのだが、全く口を挟んでこない。 「セルティ…例え日本国内とは言え君とこんなにも離れるなんて…俺には耐えられない…!セルティー!セルティいいいい!!」 「新羅、艦内ではお静かにだよ」 「つかホームシックかよ…」 涙目になりながら小窓を叩くその姿は、ついさっきまでとの自分と被る。俺、こんな馬鹿みたいな行動してたんだ…と少し後悔した。 「シズちゃん、あーん!」 飛行機の中でお昼ご飯タイム。配布されたお弁当を食べるんだけど、俺好き嫌い多いんだよね。だから未だに成長期なシズちゃんに分けてあげようと思います。一石二鳥って奴だね、うん。 「な、」 箸で人参の煮物を摘み、むしゃむしゃとひたすら食べてるシズちゃんの口元へ運ぶ。恥ずかしいのか頬を赤くするシズちゃんに心臓が高鳴りまくりだ。可愛すぎる。 「シーズちゃん、くちあけ…っ!」 新羅に頭を叩かれ、人参はぽろりと箸から落ちた。 「あああああ!」 「騙されるな静雄。臨也は人参が嫌いなだけだよ」 お前セルティはどうしたんだよ。なんでケロッとした表情で鮭食べてるんだよ。 「おお…分かった…」 「いやいやいや騙してないから!俺はただシズちゃんと恋人ごっこを…」 「…!!」 「それでも人参は食べなよ。馬鹿な脳がさらに馬鹿になるよ」 「あんたは俺の母親か」 「…………って…」 「ん?」 俺が新羅にツッコミを入れてる間、シズちゃんは何も食べていないのに口をぱくぱくと動かしていた。顔を真っ赤にして。 「どうしたの?」 「弁当の中に変な物入ってたとか?」 「い、や…別に……」 それ以降俺がどんなに猛アタックしてもシズちゃんは飛行機が沖縄に着くまで寝たふりを決め込んでいた。なんでだよ。 (恋人ごっこって……、) |