3 「ただいま」 「っおかえり!」 予想した通り19時過ぎの帰宅。扉を開けると、飛ぶように臨也が玄関まで迎えに来てくれた。目元が若干赤みを帯びている。俺がいない間にまた泣いていたのかこいつは。 「プリン買ってきたんだけど一緒に食うか?」 「うん、食べるっ!でもその前に夜ご飯食べなきゃ。今日はシズちゃんの好きなオムライスだよ!」 「……お前はもう食べたのか?」 「…俺は、食欲無いから。シズちゃんの買ってきたプリンだけで十分だよ」 「…そう、か」 もし俺がプリンを買ってこなかったら、こいつは全く食わなかったんだな。これ以上痩せてどうするんだよ。 「シズちゃん」 「っと…どうした?」 「今日…寒かった」 「………ごめんな」 抱きしめて頭を撫でてやると、肩に顔をぐりぐりと押しつけてきた。髪が首に当たりくすぐったさに笑みが零れる。暫くこの状態でいると、臨也の鼻を鳴らす音が耳を掠め、俺は小さく息を吐かざるをえない。俺は強制臨也泣かせマシンか何かなのか。 「ほら臨也、顔こっち向けて」 「……ん…」 頬に片手を添えて慰めるつもりで唇を重ねても、臨也の眉は下がりっぱなし。瞳も涙が溜まりゆらゆらと俺を映す。なんでそんな不安そうな表情をするんだろうか。俺はちゃんと此処にいるのに。どこにも行きはしないのに。 「もっと…してよ…俺だいじょぶだから」 「……ん…でも先ずはせっかく夜ご飯作ってくれたんだからそれ食わなきゃ」 「………そうだよね」 「……臨也の作る料理は美味いからなー楽しみだ!」 「ふふ、ありがと」 ようやく涙は引っ込んで、嬉しそうにはにかみ、台所へとスリッパを鳴らして行った。やっぱり俺は臨也の笑顔が一番好き。勿論臨也の泣き虫なところも含め全部が好きだけど、笑顔でいてくれた方が俺の気分だって良い。 飯を食いながら、ふと昔の事を思い出した。 昔の臨也は今よりもにこにこ笑ってて、俺に冗談言ったり喧嘩もしょっちゅうしていたな。俺はあれこれ考えることは苦手だから、よく臨也を困らせたりしたけど、結局最後には笑って許してくれた。今は学生時代全く使わなかった脳をフル回転させている気がする。臨也がどうしたら笑ってくれるのか泣き止んでくれるのか、そんなことばかり考えている。でもいくら脳細胞が頑張ってくれたって馬鹿に変わりのない俺はいつも臨也を悲しませることしか出来ない。目元を赤く染めて可哀想なくらい涙を零す臨也に、つられて俺も泣きたくなる程だ。 臨也の本当の笑顔を最後に見たのはいつだろうか? 「シズちゃん、美味しい?」 「………美味いよ」 少しだけ、しょっぱすぎる気がした。 |