連載 | ナノ






大好き?愛してる?
そんな表現はどれもしっくり来ない。
俺のシズちゃんへの気持ちはもっと奥深くて恋とか愛より卓越したものだと思う。近い表現で言えば依存、と言うべきか。止められなくて離れられなくて、まるで中毒患者のよう。でも確かにそうなんだ。シズちゃんの全てに触れたいと思っている。そのふわっふわな金髪も低めの声も細いくて背の高い身体も優しい心も昔も今もこれからも一つとして離したくない。ずっとずっと、俺が死ぬまで、永久に。


「ふう…ううっ…シズちゃん…」

静かになってしまった室内で、俺は虚しさに涙を零す。身体全体がシズちゃんを欲している。腕が温もりを求めている。頭から爪先に血液が降りてきたような感覚がして、途端に身体が冷えてしまった。ああ早くぎゅってしてよお願い。そう言ってもシズちゃんは俺が見届け、夜まで確実に帰ってこない。寒い、寒いよシズちゃん、俺のこと温めてよ。届きはしないのに、そんなことを呟く。あまりにも寒いからベッドへ潜って、縦長のクッションを抱き枕のように抱えて目を閉じると、涙が溢れてきた。
一体どうしてこうなってしまったんだろう?
シズちゃんに一目惚れをした高校生の時は、ただシズちゃんに離れただけでこんなに寂しさを感じることはなかった。酷くなり始めたのは多分、付き合ってからだとは思う。お互いに好きで、純粋に嬉しくて浮かれてて、デートとかでいちいちはしゃいで疲れて、でも帰り道にシズちゃんにキスしてもらったら疲れなんか吹っ飛ぶ位に嬉しくて。楽しさばかりが頭を占めていた。初めてシズちゃんと身体を繋いだ日は嬉しさと気持ち良さで泣き喚いたこともあったっけな。
でも今はそんな想いから遠く離れてしまった。ただただシズちゃんが俺の目の前から消えるのが怖くて、寂しくて、辛い。離れるわけがない、とシズちゃんは言うけれど、俺の漠然とした不安は去ってはくれない。抱きしめられても腕が解かれるのが怖い。キスされても唇が離されると泣きたくなる。身体を繋げても最後が来るのが嫌で何度も何度も求めてしまう。その分虚しさは増大する悪循環に陥ることは分かっているんだけれど、止められない。
これを依存と言わずに何と言うのか。
ああどうして、その対象がシズちゃんになってしまったんだろう。度が過ぎれば煙たがれるのももしかしたら嫌われるかもしれないのに。距離感は理解している筈なのに。
はあ寒い。寒いなあ。早く帰ってきてよ。じゃないと俺死んじゃうよ。

「あっああっ…うう、」

布団に潜りながらご飯も食べることも忘れ泣き続けた。