10 昨日、俺はクラスの女子に海岸に呼び出された。飯食い終わった直後で、その時臨也は隣にいなかった。新羅が俺の部屋に遊びに行きたいと言い出したので部屋に呼んだが俺は約束があったので直ぐ部屋を飛び出した。 暗闇に隠れた水平線を見ていると、小さく駆ける音がしたから振り返った。約束をしていた女子だった。わざわざ走って来なくても良いのに、「待たせちゃってごめんね」と俺に笑顔を向ける。 少しその女子と適当な会話をした後、小さな声で「すき」と言われた。「優しくて強くてかっこいいところが好きです。良かったら付き合って下さい」 驚いた。こんな真っ直ぐに言われたのは奴を除き初めての事だった。ん?奴?「シッズちゃーん!!ああもう可愛いなあシズちゃん!そんなとこ大好きっさっすが俺のダァリン☆」とか言ってくる奴だよ。 しかし奴とは違って、この女子には全く心を動かされなかった。むしろこの女子を前にして奴が脳内を支配し始める。くそっノミ虫ってのは人の脳みそまで食いやがるのか。頭を掻きながら、どう答えるべきかあちこち視線をさまよわせていると、新羅とノミ虫が部屋のベランダからこちらを見てるのが分かった。いや、新羅は見ているが、ノミ虫は顔を伏せていた。 「あ、静雄ー!!」 新羅は腕を思いっきり振りながら自分をアピールする。 その声に、自分たちが見られてると驚いたのか、女子は「返事はあとで良いです!」と言って走っていってしまった。い、意味分からん…。 「えー!?臨也ぁー!?ここにいるよー!!」 「呼んでねえよ!!」 ノミ虫…もとい臨也は伏せていた顔を持ち上げる。3階だし表情は分かり辛いが、なんか、いつもと違うような。 とここまで考えて、思考が停止した。 臨也が、ベランダが落ちたのだ。 「いざっ」 無意識だった。意識したら奴なんぞ、ぜっっってー助ける筈が無い。 無意識に、俺は臨也が落ちる場所へ駆けて、ほっそい身体を全身で受け止めた。まあいくら俺でも急な衝撃に耐えられるワケもなく、そのまま砂浜に倒れ込んでしまったが。 臨也は、よく分からないけど号泣してて、薄っペらい身体に腕を回すと臨也も抱きついてきた。 「俺は手前が世界で一番、大嫌いなんだからな…」 そして、きっと告白よりも恥ずかしいセリフを、自分に言い聞かせるように。 臨也を、安心させるように。 それから、それからが大切だ。 臨也をなんとか起き上がらせ、部屋に連れて行こうとしたんだが奴はひっついて離れない。最初の内は可愛いかもしれないとか考えてしまったけど、そんなずっとくっ付かれてもウザいだけだ。 「離れろくそ臨也」 「やーだー!」 言っても埒があかねーし仕方ないから奴に抱きつかれながら部屋に戻った。何人か人と擦れ違ったが、変な噂立てられねぇといいなってもう遅いよな。 部屋に着くと新羅は既にいなかった。自分の部屋に戻ったのだろう。 未だにくっつき続ける臨也を引き剥がして、砂まみれの体を洗うために風呂に入った。結局、大浴場いかなかったな、広かったのだろうか。ていうか、明日で東京に帰るのか…。 「シズちゃんっ」 「なんで手前ノミ虫からいつの間に引っ付き虫になったんだよ。風呂入れ」 俺が風呂から出てもくっ付いてくる臨也の首根っこを掴んで風呂場に落としてきた。 もうやる事も無いので、いそいそとベッドに潜った。荷物まとめんのは明日の朝起きたらでいいや…。そう考えて俺は寝た。 で、起きたんだ。朝の5時に。 早起きできるのは嬉しいし、それは別にいいんだ。 だが問題はそこじゃない。 「!?!?」 臨也が隣で寝てる…!? 「いざっ……っ!!?」 布団を捲り上げて、息が詰まった。 こいつ、なんで全裸なんだ…。 爪先まで…見ちまったじゃねえか。 ていうか、なんで俺も上半身何も着てないんだろう。 え、待って、嘘。そんな筈…だって何も覚えてないし、え、寝ぼけて?は?嘘だ有り得ない嘘だ嘘だ。ちょ、こいつ男だぞ?俺も、男だぞ?しかも、まだ未経験な筈だぞ?寝ぼけてとかんな器用に出来るワケ…ってその前に重大なことを忘れてた。 俺らの関係って何? 「んん…っ」 「!」 慌てて布団を元の位置に戻すと、臨也は瞼を上げて、俺を見た。そして、小さく笑った。 「おはよ、シズちゃん」 「あ、あ…」 な…なに、このくそ甘い雰囲気。 「一体何が…」 「…!シズちゃん酷い…昨日あんなに激しかったのに…!」 ど う し て こ う な っ た ! ? -------- パニックシズオ 急展開ktkr これが書きたくてしゃーなかった!← |