連載 | ナノ






「今日は国際通りで自由時間か…臨也に静雄!!どこ行く!?僕的にはセルティのお土産を買いに行きたいな!」

「別にどこへでも良い」

「あ!ドタチーン!俺たちと一緒に行こう!」

「え」









「ドタチン!あれ買って!パインちゃん!」

「俺が金払うんかよ!」


イライライライラ
俺は先程から原因不明のイラつきに苛まれている。普段は臨也を見るだけでイラついているが、それとは違うイラつきだ。どう意味だって?んな分かってたらこんなイラつかねえっつの。

「まあ、抑制係がいて良いじゃない。僕は安心して買い物が出来るよ」

「ああくそイラつく…」

「…静雄は妬いてるのかな?臨也が門田と仲良しで」

「違ぇ!」

とあるお土産屋。
臨也は門田にベタベタひっついているのを視界に捉えた。それだけでこのイラつきが生じる。今すぐ標識を引っこ抜いて2人を引き裂きたいぐらいイラついてる。
それが嫉妬なんて信じたくねえけど…。
いつも俺んとこばっか来るあいつが、なんで門田に…。

「あああくそ!!」

「ぎゃあー!ごめんなさいごめんなさい僕の思い違いですね!嫉妬じゃないですね!だからおろして静雄さああん!」

気付いたら新羅の頭をわし掴みにして持ち上げていた。

「おい臨也、静雄が怒ってるぞ。またお前何かやらかしたのか」

「え、別に何も…それよりもさ…」

2人はそのまま店の奥に進んでしまい、ついに俺の視界に入らなくなった。うぜえ、なんだよあいつ。
ぶつけようのない怒りを、試食コーナーで暴食する事で晴らそうとしたら、新羅に止められた。

「傍迷惑だから止めようよ静雄」






そうこうしている内に、昼飯時になってしまった。しばらく経っても俺のイライラは治まらず。

「はいはーい!お昼ご飯はタコライス食べたいです!」

「…?タコライスってなんだ?」

「沖縄の料理で、ご飯にタコスを乗せたものだよ。僕は沖縄ソバ食べたいなあウドンみたいなんだよねー」

「沖縄料理扱ってるお店って何処かなあ?あ、あそこはどう?シズちゃんも良い?」

「……………」

そう言って入った沖縄料理専門のレストラン。絵画や置物も沖縄っぽく、机の前に座布団に座るタイプの雰囲気の良いレストランだった。
店員に隅の席を通され、俺が壁際に座ると臨也は隣に座ってきた。因みに俺の前が新羅で、その隣…つまり臨也の前が門田。

適当に注文して、予想してたより美味かったタコライスとやらを食って、これまた予想してたより酸っぱくないシークヮーサーのジュースを飲んで、臨也のお得意のトークに花を咲かせてる(俺は相変わらずイラつきながら聞くだけ)途中、

「…あ、俺便所行ってくる」

門田が席を立った。

「いってらー」

「ああ待って、僕もトイレ」

続いて新羅も。

「2人ともツレションする程の仲だったの?」

「なんだそら」

門田と新羅がトイレに向かってしまった。
つまり、この場にいるのは俺と臨也の2人きりだ。頬杖をついてスプーンを弄っていると、臨也は俺に視線を向けた。

「……今日はいつもより不機嫌だねシズちゃん」

「あ?」

「まあいいや…携帯貸して?」

「は?」

そう言いながら俺のポケットを探り携帯を取り出してしまう臨也。謎の行動に戸惑っていると、臨也も自らのポケットから何かを取り出す。

「…何してやがる」

「じゃじゃーん!」

俺の黄色の携帯に、黄色のストラップが付いた。丸いガラスのような物を銀色の縄で括ったような…。

「なんだこれ」

「ちゅら玉ストラップっつったら沖縄のお土産代表だよねぇ。まあ貰って貰って」

そう言って臨也は自分のポケットから黒の携帯を取り出した。それにぶら下がっている赤色のそれは、

「シズちゃんとお揃いなの」

「なっ……」

「あはは、照れちゃって可愛いなあシズちゃんは。
……俺あんまり贈り物とかセンス無いしードタチンにちょっと頼んじゃった部分もあるけど…あ、安心して。これ俺とシズちゃんだけだから。新羅には拗ねちゃうから内緒ね?」

人差し指を唇に当て、俺を見つめた赤色の瞳に、すげえイラつくし、ぶん殴りたくなった。
なのに、心臓が苦しいような、痛いような。どうして。










「静雄の視線がすげえ痛かった…本気で睨み殺されるかと思った」

「どんまい門田。僕なんか日常茶飯事だから。常に殺されかけてるから」

「…お前も大変だな」

「うーん…そうでもないよ?」

「はぁ…?」