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初恋ジンクスの喪失


※静雄と臨也の馴れ初め話



「ねえ!新羅!しんらああああ!!」

「なあにいざっ…うげえっ!!突っ込んでくるな!」


中学3年にして、
俺は初めての恋をした。


今まで付き合った人がいない訳ではない。
中学生になってそーゆうのに多感なお年頃だった俺。女の子とも何人か付き合ったことはあった。勿論興味本位で。しかし俺は彼女たちに恋愛感情など持ったことは一度たりとない。
だからこんなに燃え焦がれる思いをしたのは、こんな気持ちは、初めてだったのだ。





「ええーどこ?どこにいるのー?」

「えっと…あ、あそこあそこ!ほら金髪の…」

「…!?え、あれ…って…静雄じゃないの!?」

「うそー!知り合い!?」


一目惚れというのは現実に存在していた。
たまたま通学中に見つけてしまった、背が高くて細いくせに、道路標識を引っこ抜いて不良共をなぎ倒していた隣の中学の制服を着た金髪の男の子。
まさしく雷が落ちたみたいにビビビと俺の中の何かが感じとった。
運命的なことに、新羅の知り合いらしい。

静雄君、かあ。

すごく、すごくきれい。

良く分からないけど、心臓が高らかに鳴り、顔が火照る。
彼の周りだけがキラキラと輝いているだなんて言えばきっと笑われるんだろうけど、あながち間違いでもない表現だ。
近付きたい、話してみたい。
この感情が恋と呼ぶものだと直ぐに気付いた。

「よし、俺…話しかける!」

俺の気持ちを直ぐに悟った新羅は苦笑いをした。

「うーん…まあ、やるだけやってみたら?どうなっても知らないけど…まあ応援はしてやらないこともないかな」

「……?」

そして困ったように視線を逸らす様子に、俺は少しの期待を膨らます。新羅をも困らせる彼は一体俺をどこまで楽しませてくれるんだろう。



「やはりここは偶然を装って初対面はハプニングからみたいな。ハンカチ落としましたよ的な」

「ずいぶんとまあ…古典的だね」

「気分的な意味だからハンカチは使わないけどね!」

苦笑する新羅を置いて俺は一目散に静雄君に向かって飛び出した。登校中であろう彼はどこかぼーっとした様子でこちらに向かって歩いている。

ここで、
静雄君に大接近プロジェクトその1
〜運命の彼は金髪の王子様編〜


はじめまして!俺折原臨也!
花盛りな中学3年生だよ!

学校に遅刻しそうになって、今走っているところさ!全く俺ってばお馬鹿さんなんだからっ!

「げぇっ あと1分!」

あ!学校が見えた!よし、そこの角を曲がれば校門に…、
そう思った時だった。

「はわっ!」

「うお!?」

俺の体は急に何者かにぶつかり、勢い余って地面に叩きつけられた。

「あいたた…」

「わ、わりぃ…だ、大丈夫…か?」

「あ…」

見上げると、太陽に反射し眩しいくらいの金髪が目に飛び込む。
年は俺と変わらない位の男の子だ。俺も彼も学ランを着ているけど、俺の学校にはこんな目立つ金髪の子はいなかった気がする。他校の子だろうか。

「怪我とかしてないか?」

「あ、いえ大丈夫、です…」

俺を心配してくれてるような、でもどうしたらいいのか困ったような表情で手を差し伸べられ、俺は戸惑いつつもそれを掴んだ。

「そっか、良かった」

「…!!」


優しい笑顔に、
恋の音が、弾いた―…


(…臨也それ寒いよおおおお!!)




「ただいま。かっこ良すぎて涎出てた恥ずかしい」

「お帰り。気持ち悪かった。なんで少女漫画チックにしたの!時間全然余裕あるのになんで遅刻のシチュエーションなの!?しかも恥ずかしがるところ間違ってる!!」

「いやいやでも静雄君ってば間近で見ても超イケメンだね。かっこよすぎるね。抱かれたいね」

「中3とは思えない発言。……まあ別に僕は止めないけどさ、」

「じゃあまた日をあらためて、彼と二回目の接触を図ってきます」

「え、またやるの?なんで」

「徐々に彼の記憶に俺の存在をだなむふふ」

「やめて気持ち悪い」



静雄君に大接近プロジェクトその2
〜憧れの彼と運命の再開編〜


こんにちは、折原臨也だよ。
先日に彼と出会ってから数日、俺の頭の中は彼でいっぱいなの。勉強する時も、ご飯を食べる時も、お風呂に入る時も、寝る時も。
でも彼がどこの誰かかも分からないから、もう会えないかもしれない。あと一回だけでも良い、もう一度、彼に…!!

「っあ…ごめんなさ…」

「ってーな、誰だぁこいつ?」

「ちっせー小学生みてーっすねー」

「!?」




早速計画が崩れやがりました隊長!
数メートル先にいる標的静雄君を置いて、知らない高校生らしきお兄さん2人に絡まれたであります!!

「え、あ、あの、離してください…」

「生意気言ってんじゃねーよ。ぶつかって来たのはお前だろぉ?俺今ちょーむかついてんだよねー」

「おっ先輩いつもの倉庫裏っすか」

なんだよいつもの倉庫裏って!えっ俺何?シメられんの?嘘、予想外。つかこのお兄さん器ちっちゃ!ぶつかっただけだろ。こんないたいけな男子中学生をシメようっていうの?

「…ごめんなさい」

「謝って済む問題じゃねーの」

「いっ…」

じゃあどんな問題なんだよ腐れDQN。死ね、そのままふざけたトゲトゲの髪型が刺さって死ね。
なんだよ折角こっちは楽しく静雄君とおしゃべりしようと思ったのにさー。むかつくむかつくむかt

「おい、嫌がってんじゃねーか」


「?」

「っぐわぁあああ!!!??」

「!?なんだこいつ!?なんでポストー…!!」

「!」

腕を掴んでいた男が真っ赤なポストと鼓膜に響くぐらいの轟音と共に道路に吹っ飛んでいった。
何かと思い振り返れば、そこには…

「し、ずお君…?」

「?………大丈夫だったか」

静雄君が、助けてくれた。助けてくれた、くれた(エコー)

うわ、やば、なんでこんなにかっこいいの、好き。

「あ、あの…」

「ってもうこんな時間かよ!じゃあな、もう絡まれんなよ」

「えっ待ーーっ!!」

何を話すこともなく、俺の頭をぽんぽんと軽く叩いて静雄君は走っていってしまった。
心臓が高鳴り、顔がじわじわ熱を持って行く。本気で、惚れてしまったようだ。
静雄君、静雄くん。
もっともっと近づきたいな。



その後、入学した高校がシズちゃんと同じということに気付いた。入学式の朝、早めに登校してきた俺は廊下の窓から外を見下ろしていると、桜の花びら舞い散る中門を通り抜けてきたシズちゃんと目が合ったのだ。
彼はなんと俺を初対面だと思っているらしい。まあ、別にいいけど。
嬉しくて嬉しくてテンションが上がった俺はシズちゃんに近づきすぎて高3の春ぐらいまでしょっちゅう暴力をふるわれたりするのだか、
まあ、その先の話はみんなが知ってる通りってことで。







「初恋は叶わない、というけれど…ね。これはもう、赤い糸で結ばれてるとしか」
「今日もとっても気持ち悪いね」
「うるせー新羅眼鏡壊すぞ」





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夏あたりに書いてたの放置してた。
臨也はシズちゃん関連じゃないと黒いです。