ラブラブしようぜ! ※20万打企画 「っ!!」 体育の授業でトラックを走っている時、後ろからそっと近付いてシズちゃんのジャージの首元あたりを思いっきり引っ張り背中に雪をいれた。 シズちゃんは飛び跳ねるように驚いてから俺を一睨みされ、同じことをされそうになる。 「やめてえ!シズちゃんに犯されるぅ!」 「誰がんなバカなことするかよ!!」 「ひゃああっ冷たああ」 首の後ろのジャージを引っ張られ背中に雪が伝う。人肌の体温ですぐにそれは水へと消えるが、背中を伝った違和感は消えない。うう、気持ち悪い。 そんな事をしてると、トラックの外にいる新羅にこちらにも聞こえるくらいの溜め息をつかれた。 「はあ…何いちゃいちゃしてるの?早く走りなよトラック5周でしょ」 「うるさいな新羅!見学の癖に!」 「僕は君たちと違って並外れた身体能力を持ち合わせていないんでね」 「君がひ弱なだけだろ?もやしんら!」 「言ったね?僕が一番嫌いな言葉を今言ったね?」 「ほら、お前らいい加減にしろ」 新羅と一触即発な雰囲気になったのもつかの間、まるで猫の首を掴むように首元のジャージを引っ張って、ドタチンは俺を新羅から離した。さっきそこシズちゃんにも引っ張られたんだけど、伸びないかなあ。まあそれはさて置き、ドタチンは相変わらずジャージの似合う男だ。少し息が上がっているのさえ色気を感じるのは気のせいか。 俺がじーっとドタチンを見ていると、視線に気付きドタチンは溜め息を吐く。 「俺を見るんじゃなくて、トラックを走れ。静雄なんかもう2周目だぞ」 「げっ…いつの間に走ってるの!」 一緒に走ろうとか思っていたのに!ふん!シズちゃんなんか嫌い!…なんかじゃないけど。 しかしシズちゃんは走っている姿もかっこいい。一時間目からの体育は寒いしダルいしで憂鬱で仕方なかったが、こんなかっこいい自分の恋人が朝から見れたので良しとするか。 朝日に輝いている金髪が靡き、人一倍大きな歩幅で走る姿に一瞬本気で魅入られてしまう。良い男は何をしても様になるというのは本当のようだ。 そんな俺の考えを裂くように、冬の冷えた風が俺達の間に吹く。 「ふおお…寒い…」 「…そういえば何で臨也はジャージじゃなくてハーフパンツなの?全くこれっぽっちも興味ないけど狙ってるの?」 「ああこれは俺の珠のような肌を露出させシズちゃんをめろめろにさせようと。あっ露出で思いだした!聞いてよ新羅ー。シズちゃんの誕生日にさ…」 そこまで言うと、またしてもドタチンに引き止められる。 「静雄の事を考えるより先ずは自分の事だろ。新羅と下を交換だ」 「えっそれ僕が臨也の履くの?ていうか僕の健康が損なわれるのには全く無関心なんだね門田君」 俺は素足を擦り、手に白い息をゆっくりと吐いた。それなら早く走って体を温めた方が良いかな。 「じゃあまたね新羅!」 「えっスルーなんだ」 「風邪引かないと良いんだがな…」 「まあ臨也はバカだし引かないでしょ。もし引いたら大声で笑ってやろう」 「新羅…お前今怒ってるだろ?」 「待ってよーシズちゃーん」 「ようやくきたか、遅いんだよ」 「シズちゃんが早いんだってば!」 既にシズちゃんとは1周も差が付いてしまったが、なんとか並んで走ることが出来た。俺だってシズちゃんに負けないくらいの体力はある。天下の折原臨也さまなめんなよ。 しばらく隣で並んで走っていると、シズちゃんは少し息が上がり始めていた。その姿に寒さで緊張していた頬が緩くなるのを感じる。 白い息を規則的に吐く度に洩れる声、マラソンにより上がった体温で上気した頬、首筋にじわりと滲んだ汗で髪が張りつく項。 朝からなんてエロいんだろうかこの子は。 そう思いながらシズちゃんを見つめながら走っていると、俺の視線に気付いたらしく、恥ずかしそうに 「お前、もう、先行くか、下がれっつの!」 息も絶え絶えに言う姿に、軽く昇天するかと思った。 準備運動変わりのトラック5周は終わり、いよいよ授業のメインのサッカーが始まった。どうして冬にサッカーやるんだろうね。寒いのに。夏でも熱いから嫌だけど。要は体育全般嫌い。 3つのチームに分かれて試合をするのだが、俺とシズちゃんとドタチンは見事に分かれてしまった。新羅はシズちゃんと同じチームだけど、本日は見学。 「まあ新羅は居ても居なくてもあんまり関係ないよねー」 「サッカーは専門外なんだ」 「そんな格好良く言うんじゃなくて、出来ないって言えば良いのに」 今の試合はシズちゃんのチームバーサスドタチンのチーム。俺のチームはここで点数を数えるだけだ。それの仕事は俺以外のチームメイトがやってくれているから、俺は気楽にゲームを見ることが出来る。 シズちゃんはよくサッカーボール破裂させるほど蹴り飛ばしたりもするけど、最近は加減を覚えてきたのかみんなと溶け込んで楽しくそれはもう楽しくゲームしている。 「はぁ」 「ほら臨也、ため息ついてないで静雄凄いよ。ほら点いれるよ!」 知ってるよ。ほんっとカッコイいよ。惚れ直しちゃうくらいかっこいいよ? でもね、体育館で体育をしてる女子たちが窓からサッカーを見ている様子もここからだと良く見えて。 シズちゃんが点を入れると黄色い悲鳴やら声援が飛ぶのだって聞こえる。 「おお門田も負けてないねー」 「きゃードタチンがんばってー!!」 「全く臨也は…」 こうして10分間の試合(同点)が終わり、チーム交代。次の試合は俺のチームとシズちゃんのチーム。 試合のホイッスルが鳴った途端、ボールはシズちゃんの方へ飛んできた。胸で受け止め、ボールが地面に降り、シズちゃんの脚は動き始めようとした瞬間。 「させるか!」 「あっ手前…っちょこまか動くなっつーの!」 「シズちゃんの攻め方はいちいち大きいんだよーっと…ほいっ」 姿勢を低くしてシズちゃんからボールを奪ってくぐり抜ければ、ゴールまでは楽に運べる。他の人が俺からボールを取ろうとしても無駄。ひょいっと蹴っちゃえばあっという間にゴール!一点ゲット! 「なあああっ」 「ゴォオオル!!シズちゃん!やったー!」 「俺とハイタッチしようとすんなバカか!!」 シズちゃんに向けて両腕を挙げると、頭を叩かれながら(痛くないけど)突っ込まれた。 ちょっぴり悔しそうな表情もいいね。そそるね。 「じゃあ…抱きしめて!世界の果てまで!」 そのままシズちゃんに抱きつこうとすると、今度は頭を押さえられてしまった。 「おいボール来るってば」 「そんなことよりラブラブしようぜ!!」 「それはサッカーじゃねーのか…って!?」 「だっ…!?」 シズちゃんと話していたから、油断していた。 いや、油断をしてたんじゃなくて、ただ単に見ていなかった。 クラスメイトが蹴り上げたボールが俺の頭に向かって飛んでくるなんて。 折原危ない! そんなクラスメイトの声が虚しく校庭中に響き渡った途端だった。 俺はシズちゃんの驚いた表情を最後に、意識を文字通り世界の果てまで飛ばされてしまったのだった。 だから体育なんて…嫌いだ…。 「臨也!?」 次に目が覚めた時は、保健室のベッドの上だった。 心配そうに俺を覗き込むシズちゃんとドタチン。しかし新羅の顔はやけにニヤついてたから眼鏡を粉砕させる勢いで顔面を殴っておいた。 ラブラブしようぜ! しかもまだ授業中だから! ----------- ラブ!の人さまより 「青アイ設定静臨で授業or学校行事文」でした! とりあえずオチなかったことをお詫び申し上げます。もうどこまでも書いてしまいそうな勢いで「やばい…終わらない」と思って無理やり終わらせた結果がコレでした。 新羅と臨也は仲良し故の仲が悪いです(?)ギャグだと思っていただければ嬉しいです^^ それではリクエストありがとうございました! |