bun | ナノ




心情


※日記ログ
※高校生門静





「あーくそ、わかんねえ…」

「何処が分かんないんだ?」

「…全部、だな」

「……そうか…」

まさか静雄が俺の部屋に来て勉強をしているだなんて、どこかの喧嘩相手や医者の卵が聞いたら驚くだろうな。
まあ、俺もまさか静雄が来ると言ってくれたときは内心驚いたが。

「………はあ」

「ため息つくと幸せが逃げるぞ」

「だって、あと1週間で夏休み終わるとかありえねぇ…」

「それに気付いたから、今ここで課題を終わらせようとしてるんだろ」

「今まで何もしなかった俺も悪いんだけどよー」

だらんと背を丸め、机に顎を押し当てて俺を見上げる静雄。なんだその仕草。無駄に可愛いからやめて欲しい。いや、無駄じゃないけど。って何考えてるんだ俺。

「で、どこから分からないんだ?」

「ここの登場人物の心情が…」

「現代文か…」

静雄の持っている国語のワークは夏休みの課外の一つ。つーかこれは教えるよりはセンスの問題だよな。数学と違ってはっきりとした答えを出せない国語は俺だってよく間違える。特に登場人物の心情とか、意味分からん。

「解答みたらどうだ?」

「結局それか…」

「悪いが、俺が全て分かってると思うなよ…」

「う…じゃあ何なら分かるんだよお前…」

ごめんな、静雄。そうそう言うと静雄は国語のワークを閉じて英語のプリントを取り出した。そっちも夏休みの課外だ。

「じゃあ英語」

「まあ…それなら、」

「……!」

あ、今静雄の周りに花が飛んだように見えた。可愛いな。なんだこれ、俺に教えられたいと期待しても良いのだろうか。

「じゃ、じゃあまずその前にコーヒー作ってくるから待ってろ」

「え、あ、俺、」

「……どうした?」

「砂糖とミルク…多めな…」

「………っ」

「なんで笑うんだよ!!」

不意打ちだっつの静雄。俺はお前の心情も読むのも苦手なんだよ。












無意識に可愛いシズちゃんにドキドキするドタチンのつもりだった。
登場人物の心情が分からないのは私ですだ。