bun | ナノ




ヒトリジメプランナー


※20000HIT企画
※青アイ設定シズイザ





球技大会なんて、あっても年に1回で良いと思う。

「なんで春期があるんだ…」

「それは僕も同感だよ臨也」

ありがとう新羅大好き、嘘。








待ちにも待ってない春期球技大会がきた。多くの生徒はこの日のために練習をしてきたらしく、やたらと張り切っている様子だ。何種目かの球技をクラスで割り振り、一人一種目強制参加というスポーツ嫌いにとっては鬼のようなルール。球技なんて興味ない奴は本当に出来ないのに学校は何を考えてるんだろうね。
かく言う俺もその一人だ。シズちゃんは運動が出来るつまりだいたいのスポーツは軽く(本当に軽く)こなせちゃう人で、今回どの球技の種目に出ようか悩んでいた。その姿は大変可愛らしいのだが、後ろの黒板に貼られている球技大会概要のプリントを見ているシズちゃんの周囲の視線に俺は苛ついた。視線は言わずともクラスメイトの誰かで、どの種目を選んでくれるのか、期待の眼差しをシズちゃんに向けていた。ああもう出来る奴ってやんなっちゃうよね!シズちゃんは俺だけに見られといればいいのに……なんて、こんな醜い独占欲には今だけは蓋をする。

「決めた?」

「…じゃあ、バスケにするかな」

顎に手を当てて紙を凝視しながらポソリと呟くシズちゃん。これでバスケの競争率ぐんと上がったな。正式には今日の5時間目に誰がどの種目に出るか話し合いをするんだろうけど。おそらく、バスケやりたい人、の学級委員長の声にたくさんの手が挙がるに違いない。

「じゃあ俺もバスケにしよっ」

「は?手前出来るんかよ」

「いや補欠で。俺はシズちゃんの専属応援団をする」

「…………はあ、勝手にしろ」


案の定、バスケをやりたい生徒はたくさんいて、言わずもがなシズちゃんは一番最初に選ばれ、あとはジャンケンで決めた。俺はチョキ出したら負けた。嘘だ有り得ない。
誰かと交換してもらうにもみんなの張り切りようが若干怖くて、話しかけづらかった。冷静なまま手をグーにしたドタチンを除いて。何だろうこいつら、カルト教じみてる気がする。さしずめ平和島教…みたいな。
ていうかドタチンもバスケなんて!俺なんで取り残されてる!?

「……なんだ負けたのか手前」

「…うー…シズちゃんとドタチンの応援したかった…」

「……そういえば新羅は」

「新羅……?」

新羅は教室の隅っこで文庫本を読んでた。あの野郎さり気なくどの種目にも入らないつもりか。
…俺もそうしよう。












というわけで、球技大会が来た。長ったらしい校長の挨拶が終わると、女の子たちがクラス全員分に手作りのハチマキを作ったようで、男子に配っていた。
俺にもそれは渡され、ただなんとなく付けずに体育館に向かいシズちゃんに目を向けると、シズちゃんは既にハチマキをつけていた。…気に食わない。

「シズちゃん!」

「っうわっ!離れろノミ蟲!」

「やあっ!シズちゃんっ俺にハチマキつけて!」

「うっぜえ!それで首絞めてやる!」

「静雄ー1回戦始まるぞー」

「…ちっ、俺は行くからな」

「あっ」


行っちゃった…。








「なんて表情してるんだい?臨也らしくないよ」

体育館の隅で体育座りをしながら応援していた新羅の隣に座ると、そう声をかけられた。
無視してバスケットコートの中を見ると、俺のクラスは試合が始まっていて蛍光オレンジ4番のゼッケンを着たシズちゃんが元気に暴れ回っていた。今更だけどシズちゃんってバスケのルール分かってるのかな。あ、今ドタチンが点入れた。凄いね。かっこいい。

「静雄もさっき点入れたんだよ。ダンクシュートで」

「…へえ…」

「さすが静雄だよね。女の子からの声援もすごかったよ」

「なんでそんな事を俺に言うのかな?」

「あはは、ごめん。さっき静雄が脱いだジャージあげるから許して」

「……やだ」

「じゃあ静雄のペットボトルとタオルもあげるから」

「………」

新羅から渡されたシズちゃんグッツ。全部ジャージにくるめてぎゅっと抱きしめて、体育座りをしてる膝に顔を埋めた。

分かった。疎外感だ。

シズちゃんが、クラスに馴染んでいく度に、俺だけが取り残されていくような。
シズちゃんが仲間とすれ違い様にハイタッチをする度に、俺だけがこのまま消えてしまいそうな。

寂しいんだ、俺、シズちゃんに構ってもらえなくて。
馬鹿馬鹿しい感情だよね。依存してるのかな、シズちゃんに。

「……ちょっとトイレ」

「いってらっしゃ……」


ピピー!

ホイッスルの音が体育館に響き渡り、体育館隅の扉に手をかけた俺でさえ肩が震えた。音デカすぎだろ。
思わず後ろを振り返ってしまう。シズちゃんやドタチンの周りの男子や応援にきていたクラスの女の子たちが嬉しそうに騒いでる。勝ったんだ、俺たちのクラス。

扉に手をかけたまま、じいっとシズちゃんを見る。目立つ金髪を掻きながら若干嬉しそうに男子と話して、女の子に声をかけられている。すごいねー人気者だねーシズちゃん。俺の存在なんか、全然、気付いてない…。
やっぱりスポーツは嫌いだ。




「……あ……」

今、シズちゃんと目が合った。
気のせいだろうか。ちらりと一瞬だけこちらを見ていた気がする。

しかも、こっち来た。
うわ、あ、なんか、泣きそう。嬉しいかもしれない。

「臨也」

「な、」

「それ俺のだろ、返せ」

シズちゃんは早足で、扉の前にいる俺のところまで歩いて来た。
相当暑いらしく、汗を垂らし眉を潜めながらも右手を差し出された。最初は意味が分からなかったが、自分が抱えている物を見て気付いた。

「ジャージとタオルとペットボトル。手前盗む気だったのか」

「これは新羅がくれたの」

「元は俺のだ」

「…や!」

「てんめ…っ」

これ渡したら、シズちゃん向こうに戻っちゃうんでしょ。
だから嫌。返したくない。まだ、まだ一緒にいたいのに。

扉を背に俺が縮こまっていると、シズちゃんに距離を詰められる。

「…………あ」

「?」

「………」

何を思いたったか、シズちゃんは俺の肩にかかっていたハチマキを取り、俺の頭に巻いた。
腕を回され、後ろの方で蝶々結びに縛られる。
シズちゃん、この格好すごく密着してるんだけど気付いてる?

「………よし」

何でやり遂げた顔してるんだろう。

「…さっき、縛ってやれなかったから」

「あ」

「だから怒ってるんだろ?それも返してくんねーし」

ようはシズちゃんは、俺が試合前にシズちゃんにハチマキを縛ってくれなかった腹いせにシズちゃんグッツを盗もうとしてると思っているらしい。
…俺怒ってるように見えたのかなあ?

「違いますよーだ!」

「えっ!?」

驚いた顔されても可愛いだけだ馬鹿やろー!
するりと俺がシズちゃんグッツを抱えたまま扉を開け外に逃げると、シズちゃんは俺を捕まえようと追いかけてくる。

そうだこれだ。俺はこれが好き。自分だけを見てくれる、シズちゃんが、大好き。

「待て臨也ああああ!!」

「へっへー!早くしないと飲んじゃうよペットボトル!間接ちゅーだよ!!」

「くそっさせてたまるか!!」

遠くでシズちゃんを呼ぶ声が聞こえる。おそらく2回目の試合だろう。俺のクラス勝っちゃったんだっけ。でもごめんね。頭に血が上ってる間は、シズちゃん俺に夢中なの。

「こっちだよー!」

「ハチマキ縛ってやっただろうが!早く返しやがれ…っ」

そうだな、屋上まで上手く誘導して、誰もいない2人きりの場所で返してあげないこともない。

お疲れさまぁってペットボトルとタオルを渡すのもなんだかマネージャーさんな気分で面白いかもしれない。

体育館には、戻らせてあげないけどね!









スポーツは嫌い。
シズちゃんが俺を見てくれないから。




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空さまへ!
青アイ設定のシズイザということで、球技大会を…!!
臨也は構ってちゃんで寂しがりやさんです。可愛らしくかけなかったのが心残りだ…。

リクエストありがとうございました!