bun | ナノ




ゆらゆら四拍子1


※20000HIT企画
※青アイ設定シズイザ
※シズデレすぎた





「おはよー静雄ー。今日は大人しいね!」

「ははっ眠いのかな?後ろに寝癖付いてたよ?」

「それよりさあねえ聞いてよ!昨日の夜に臨也がいきなり俺ん家来て…!」

「わわわごめんごめんそういう怪しい意味じゃないから安心しっぎゃあああ静雄!?」

「おちっ、落ち着こう!?ほら深呼吸して!」

「…!…もしかして、臨也と何かあったの?」

「…………」





大嫌いって
言われた。










1週間後に中間考査で、勉強をするためにいくらか早く登校する生徒が見受けられる朝、俺は普段通りに家を出た。寝坊したから少しだけ頭がぼーっとする。あああと1週間後なのにどうするよこれ。そんなに焦ってもどうせテスト勉強なんて前日にちょこっとやるくらいだろう…あれ俺このまま卒業出来るのかな…。まあ進級出来ているなら問題は無い。ぼんやりと考えている内にいつの間にか学校について、教室に入ろうとした時だった。

「神さまアターック!!」

臨也が背中にタックルしてきた。多分俺ではなかったら倒してるんじゃないか位の勢いで。つかなんだ神さまアタックって。誰が神さまなんだ。

「っ!いざ…」

「シズちゃんあのね…!」

何か言おうとしてくる臨也の襟首を掴み、背中から剥がして自分の前に持ってきた所で、思わず目を見開く。眠気が一気に覚めたような。

「!!っ…どうしたんだそれ!?」

「あ……」

臨也の片方の赤茶の瞳が眼帯で覆われていた。真っ白な肌に真っ白な眼帯。どうも痛々しい。

「いや、あの…ものもらい?」

臨也の目が僅かに泳ぐのを見逃さなかった。これは臨也が嘘をついている証拠。
襟首から手を離し臨也を下ろす。良く見ると、首もとや手にも包帯や絆創膏が貼ってあるのが見受けられた。

「………ここも」

「あ、いや、その」

理由など勿論俺が知るはずがない。何より、臨也が俺以外の理由でこんな大怪我をするなど想像がつかない。

「…誰にやられた?」

だからこそ、少なからず俺は心配をしているんだろう。クソノミ蟲の分際でなんで怪我してんだよって。

「いっいや違うの!そういうんじゃなくてね、でさ、シズちゃんその、今日俺」

「話を逸らすんじゃねえ」

「う、あ…」

どもる臨也に苛立ちが募る。どうせものもらいなんて嘘に決まっている。本当の事がしりたくて、臨也の手首を抑え眼帯に手を掛けて、少し持ち上げようとする。

「違、本当に大丈夫だから。気にしないでよ…ちょ、あ!」

「………ほらみろどこがものもらいだクソ…痣出来てんじゃねえか」

どう見ても自分から転んだとは言い辛い位置を怪我している。
誰だ臨也の顔目掛けて殴った奴。これを付けた奴がいたら、万死だな。殺す。
なんでって?
……言わなきゃいけねぇ理由があんのかよ。


「!っ馬鹿シズちゃん……っ」

「あ?」

「こんな姿っ見られたくなかったんだもん!」

「はあ!?」

両目からぽたぽたと零れる雫に冷や汗が垂れた。
なんでこいつ急に泣き始めて…。

「な、いざ、手前…っなんで俺にっ」

「うわあああんシズちゃんの馬鹿!大嫌い!死んじゃえ!!」

「ちょ、おい、待てよ!いー…」

教室から出て行こうとした臨也を追いかけようとした、が、


「ああうううドタチンんんんんっ!!」

「うおっ…い、臨也!?」

ナイスタイミングだかバットタイミングだかで門田が臨也の逃げ出した先を歩いていた。
そして朝に俺にした時と同じように門田にタックルをしていた。

「……………」

遠目で2人を見てしまった俺は何故か臨也を引き戻すことが出来なかった。







で、冒頭に戻る。

「あーあ、ダメじゃん静…すみませんすみませんすみません」

「…うっぜえなんだアイツ…本当にわけわかんねぇ」

「あははは青春だねえ」

「ふざけてんのか馬鹿」

あれから4時間が経過して昼休みの時間になっていた。勿論あれから臨也とは一言も喋っていないし、しかも3時間目から奴と門田は教室抜け出してどこかに行きやがった。あああくそうぜえむかつく。

「臨也、泣いてたじゃないの」

「……ああ」

「最近、彼よく泣くよね」

「…そうだな?」

1年の頃はひたすら俺が追いかけ回して、2年の頃は逆に追いかけ回されてただけだからな。もしかして修学旅行以降なんじゃねえか。臨也が直ぐ泣くようになったのって。

「不安なんだよきっと。ほら、情緒不安定なんだよ。思春期ってやつ?」

「……なんで」

「!?それを聞くの!?」

え、驚くのそこ。

「臨也が静雄の事大好きだからに決まってるじゃないか!」

「は…はあ」

「好きな子の事考えると不安になるでしょ?相手が自分の事どう思ってるかーとか!」

新羅はいつもこういうの得意気に話すよな。

「臨也だってそうなんだよ。好きな人の前では強がってるんだよこれでも」

「…それと今回の事とはなんの関係があるんだよ」

「それを僕に聞くのか……」

「?」

「まあとにかく、静雄だって臨也の事好きならもっとちゃんと行動に移してあげるべきだと思うんだ」

「!?はあ!?ってめ何言っ」

「でも嫌でしょ?臨也に嫌われたままなのも、臨也が門田にひょいっと取られちゃうのも、」

「……………」

否定出来ない自分が悔しくて、苦しい。

「行ってきなよ、ごめんなって、大好きだよって」

「っそんなの言えるか馬鹿!!」

「おっ“好きじゃねえ!”って言わないことは肯定したね!?認めたね!?」

「なあああっ」

「ふふふ、臨也と門田は屋上に行ったよ」

新羅が悪魔の笑みを浮かべてる気がする。

「っくそ、行けばいいんだろ行けば!!」

「僕も着いていっていい?」

途端に花が周りに咲いてそうな表情しやがって本当にムカつく奴だな。





少しだけ、期待してもいいか。


この屋上の扉を開けたら、奴がいつものように駆け寄ってくるかもしれないって。
俺の顔見て泣きそうな表情で、ごめんねって謝ってくるかもしれないって。

それを望んでしまってる自分が本当に意味分かんなくて、情けなくって。

「臨也…」

奴の事考えてこんなに泣きそうになったのなんて、初めてなんだ。