bun | ナノ




反則ターゲットユー


※20000HIT企画
※青アイ設定シズイザ






春が始まる前の頃だった気がする。

「シーズちゃん」

昼休み、シズちゃんが屋上に行ったのをこの目でしっかりと見た俺は、直ぐに昼ご飯(コンビニで買った)の支度をして後を追った。

「シズちゃーん!!来ちゃった!」

壊れかけの扉を開けるが、そこに俺の望んだ人はいない。

「あれ?」

屋上に飛び出して辺りを見回す。可笑しいな、確かに自分はシズちゃんがここまでの階段を上っていったのに。どこにいるんだろうか。
くるんと一回転した時、視界の隅で金色がチカリと光った。
少しだけ視線を上げると、そこにはー


「まさか給水タンクの上にいるとは…」

寝っ転がっているらしい。シズちゃんはこちらに頭を向けていて、声をかけても返してはこなかった。
そういえば屋上に来ることはあってもタンクの上まで上った事は無かったなあ。そんな事を考えながらひんやりとした梯子を伝って、シズちゃんの元へ向かう。

「シズちゃん!いるなら無視しな…っ………あ」

寝て、る。

シズちゃんが、給水タンクの上で腕を枕代わりにして眠っていたのだ。

「おーい」

まさか本当に寝てるとは思わなかった。今日は冬にしては日差しも出て温かい方だから、こんなとこにいたら確かに眠くなっちゃうよねえ。

俺もタンクの上に乗っかり、すやすやとお休みモードのシズちゃんの隣に胡座をかいた。
俺が隣にいるのに、気付かないなんて、変な感じ。
いつもは何かしらの反応をしてくれるのに。

「ていうか、シズちゃん寝るの早いなあ…」

俺は起きているシズちゃんを見てここまで追いかけてきたのに。

「まさか寝たふりとか止めてよねぇ」

つんつんと頬をつついてみるが反応無し。寝てるかなあ寝てるよねえ。

…よし、

「…あ、以外と、柔らかい…」

今度はシズちゃんの頭を撫でて見る。普段は身長的な意味でなかなか届く場所じゃないから、ちょっと新鮮な気分。地面に零れるような金色を梳いてると、シズちゃんは小さく眉間に皺を寄せた。
…可愛い。

「ん……」

あ、起こしちゃったかな?

「…んむ…」

髪から、ひやりとした頬に手を移動させる。自分で言うのもアレだけど白いなあ…。なんか幸せ。

「い…ざ、や……?」

シズちゃんは薄く目を開いて俺を見る。寝ぼけているのだろうか?頬に置いている手を重ねるように掴まれてしまった。少しだけ心臓の音が早まる。

「臨也だよー」

「ん、いざや…」

俺が笑うと、シズちゃんも安心したかのように微笑んで、また瞼を下ろした。

やばい…なんだ今のシズちゃん。凄く可愛い。どうしよう可愛い。

「シズちゃん…」

心臓の音がやたらと体中に響く。俺の視線は自分の名前を紡いでくれたシズちゃんの唇に集中してしまって。

キス、したいなあって思っていた。
してもいいかなあ。

寝てるし、気付かないよね。

「起きないでね?」

片方はシズちゃんに掴まれてるから、もう片方を地面に付いて、ゆっくりと半身を傾ける。
俺の前髪がシズちゃんの顔にかかるまで近付くと、少しシズちゃんが身じろいだので心臓が跳ね上がった。

近い。睫、長。
かっこいい。

大好き。


「……っ」

そっとシズちゃんの唇にキスを落とす。

「ん……、」

「っごめ、」

「…………」

ドキドキなんてレベルじゃない、破裂しそうな位心臓の鼓動が高鳴り、死にそうだ。たいして暑くもないのにどっと汗が吹き出た気がする。冷や汗、だろうか。
ぶっちゃけ柔らかかったのか固かったのか、冷たかったのか熱かったのか、感覚など気にしてる余裕などなかった。一瞬で分かる訳はないんだろうけど。

だから、もう一回…

「……って出来るわけないだろおおお!!!」

予想以上に恥ずかしいだよ!いつもより顔近いし、相手が起きたらどうしようとか、なっなによりも、

初めて…だったんだから…!!




「…!!臨也、何でここに!!」

「!シズちゃんっ」

途端に飛び起きるシズちゃん。あ、やだ、今声が上擦った恥ずかしい…。

「はっはは、シズちゃんの寝顔見ながらご飯食べようと思ったんだけど起きちゃったぁ。残念残念っ」

「っ手前…!!」

「…!」

ああああ視線がどうしても唇に行く!やだやだやだなんでだよ馬鹿!なんで意識しちゃうんだよ俺の馬鹿!

脳内パニックを起こしている俺の隣で、シズちゃんはまじまじと俺の表情を伺っていた。やめてそんなに見ないでよ、ねえ。

「…なんか臨也、顔赤くねぇ?」

「は…?そんな事な…っ」

不思議そうに首を傾げたシズちゃんの大きな手の平が、俺のひっひひ額に…!!

さっきよりも顔に熱が集まったのを感じ、きゅっと瞼をキツく閉じた。
ああもうこんなに焦るならキスなんてしなきゃ良かった…!

「熱はそんなねぇみたいだけど」

「離してっ」

「うわ、」

手をぶんぶんと降りシズちゃんから距離を取る。
そのまま後退りをすると、何故か彼はさらに寄ってきた。

「なんで来るの!」

「だってお前このままじゃ、」

落ちるぞ。
そう言って、腕を引かれ、シズちゃんの胸に引き寄せられた。
そうだ、ここは給水タンクの上だったんだ。
と冷静に考える暇も無く。
俺、しし、シズちゃんと密着して…。いやでもこれ日常茶飯事だし。俺いつもシズちゃんに抱きついてるじゃない。
今回は、違う。シズちゃん、腰に、手が…!!

「なんだよ臨也、今日手前なんか可笑…」

「っにゃあああっ」

「ちょ、いざっ」

それはこっちの台詞だ!
いつもそんな事しない癖になんで今日に限って恥ずかしい事ばっかりするんだよ!俺がキスしたのがいけないの!?シズちゃん実は起きてたの!?

心臓が本気でギブギブと訴えかけてきて、堪えきれなくて、俺はタンクから飛び降りシズちゃんを置いて逃げ出した。

「シズちゃんなんか、シズちゃんなんかああ」


大っ好きだああああああ!!!



叫びながら俺は走った。とりあえず今となって思い出せる事は、やたらと目がぐるぐる回っていたことだ。












いつもと違う君は頬が真っ赤なりんご色。面白がってからかってみたものの震えるその姿がやたら愛おしく感じて。
微睡みの中で見た夢は、妄想で無かったら良かったのに、なんて、





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ヘタレなデレ…略してヘタデレ←

匿名希望さまより静→←←ry臨のリクエストでした。
思いついたネタで良いですと優しいコメントを下さったので、遠慮無く長編の続編にさせていただきました(笑)
前回の「最強ツンデレナイト」で臨也の初ちゅーがどうたらみたいなことを言ったので、ちょっと書いてみました。やはり初ちゅーは彼じゃないと…。
へたれなシズちゃんかどうかが微妙です…。しかし自分を好きだと言ってくれる臨也に手を出さない彼は十分ヘタレだと思いますw

リクエストありがとうございました!!