bun | ナノ




温泉アイテナラリー1


※20000HIT企画
※青アイ設定でお泊り会



「1等が2つ?!……っ1等2口出ましたあああああ!」

カランカランとベルの音を立てておじさんが叫ぶ目の前で、

唖然とする高校生4人。






「臨也って普段幸薄い割には強運の持ち主なのかもしれないね。今度検査させてくれないかな」

「うん。いつかね」

目をキラキラ輝かせている新羅の隣で俺は温泉旅行ペアチケット×2を握り締めていた。つか新羅、俺のこと幸薄いとか殺す。

まあそれはともかく、事の成り行きを説明しよう。
俺とシズちゃんとドタチンと新羅の4人でいつものように学校から下校している途中、たまたま通りかかった道端で抽選会の券を2枚拾ったのだ。抽選会なんてしなくても欲しい物は買えば手に入る俺だが、たまには良いだろうと思って券に書かれていた抽選会場であるスーパーに足を運んだ。
1等温泉旅行ペアチケット2口、2等ゲーム機のハード10口、3等米5キロ50口で残りはポケットティッシュというまあそれなりの抽選内容で、ボックスに入った銀が塗られた紙をスクラッチする形式の抽選会だった。
ボックスから紙を2つ取り出せば、ドタチンが100円を取り出して削ってくれた。2つとも何も書いてなくて、結果ティッシュだったら4人でどうやって分けよう、と考えている最中、ドタチンが急に肩を強ばらせたと思いきや、1等が並んだ2つの紙を突き付けられた。

以上が回想だ。

「まさか2つとも1等なんで誰も思わねぇよなぁ。つか1等すら取ったことねぇのにノミ虫の分際で何取ってんだ」

「いや俺だって驚きだよ…」

温泉旅行だって4人分ぐらい俺がちょっと出せば行ける金額だけど、やはり抽選で1等を取るのは素直に嬉しい。当分悔しそうなおじさんの顔は忘れなさそうだ。

あ…そうか、ペアチケットが2枚だから4人で行けるのか。

「よし、明日……行こうぜ!!」

「明日かよ!!」

また俺らかよ!というツッコミが来ると思ったがどうやら違ったようだ。

「…セルティとお別れか…」

みんなが諦めモードのような空気漂わせてるなんて信じないんだからね。





翌日。
温泉で有名な旅館へ足を運んだ俺たち。因みに今日はバリバリ学校がある水曜日だが、俺たちは休んできた。まあ学校行っても喧嘩やらサボりやらで授業出てる事なんて少ないんだけどね。


「おぉーすごい!景色が見れる部屋なんだー」

「思ったより広いんだな」

「悪くねぇ…な」

部屋に踏み入れた途端の、各々の反応に口元が緩んでしまった。どうだ、その景色は俺が当てた券のお陰だよ。

「いいねいいね。桜もまだ散ってないみたいだし花鳥風月そのものだねぇ」

「新羅は今回セルティって騒がないんだね」

「ああ…なんか“新羅、楽しんで来てな”って言われたから楽しもうと思って!」

「セルティに対しては素直なのか…」

まあこの首無し馬鹿なぞどうでも良い。問題はシズちゃんだ。
温泉旅行と言ったら色々あるじゃない色々と。ねぇ?
今回は4人だけだし邪魔はされない。絶対にシズちゃんとラブラブするんだ!これ目標!

「臨也、何にやけてるの?」

「い、いやちょっとお泊りのめくるめく世界に思いを馳せていたところ」

「気持ち悪っ」

「!シズちゃんが俺のこと気持ち悪いって…ドタチンンン!!」

「あー、今のは俺もフォローできねえわ」

「裏切り!ドタチン裏切り!!」

「臨也うぜええええええ!!!」

「静雄!?怒るタイミングそこなの!?」

8畳分の旅館の1室は、俺らにとって結構狭いらしい。