弱気なストーカー ※静←臨で臨+波 「ストーカーって面倒だよねぇ。自覚無いし、相手に嫌がられてるのに自分は守っている気になっている。ねぇ波江?」 「何度も言ってるようだけど、私の愛をストーカー呼ばわりしないで頂戴」 「別に君の事を言ってる訳じゃないんだよ」 夕暮れ時。 私のたった一人の仕事仲間であり上司の折原臨也は、パソコンに視線を向けたまま勝手な事を言い始めた。 一応誤解されていると困るので、ツッコミはいれておく。 「まあ波江もそんな感じだからね。………お……、今やってるの片付けたら今日はもう帰って構わないから」 「何かしら、今の間は」 「なんでもないよ」 少し焦り気味の上司に、私は口元が緩むのを必死に隠していた。緩んだところでこの姿を見られる確率は少ないのも同然だが。 何故なら彼は今、自分の目の前にあるパソコンの画面に夢中。 あら、いつの間にか平和島静雄が帰ってきたようだ。…だからあんな反応をしたのだろうか。 さて、ストーカーはどちら様かしら、折原臨也。 私のパソコンの画面には、平和島静雄の自室が写っている。斜め上の、天井から部屋全体を見渡せるように設置したカメラは、只今平和島静雄が黒いベストを脱いでいるのを捉えている。ちらりと上司を見ると、先程と全く目の色を変え、食い入るように画面を見つめている。はっきり言って気持ち悪すぎる。 「あなた、本当に平和島静雄が大好きなのね」 「……なんでそこでシズちゃんが出てくるわけ?」 「見てるからに決まってるでしょ」 「ちょ…!!」 がたん、机を叩いて立ち上がる臨也にとうとう口元がつり上がってしまった。 そうね、まさか見られてるなんて思わないものね。でも私をなめられても困る。伊達に新宿の最凶情報屋の部下をやってる訳ではない。 まあその情報屋が、池袋最強の自室を盗撮してるって、それだけの話なのだけれど。 「…どうやって入った。俺のパソコンのセキュリティーは完璧だった筈だ。ていうかハッカーなの?君は誰と戦ってるの?」 最近上司がお気に入りのドラマを思い出しながら、モニターに視線を戻す。 私は上司が今どのような仕事をしてるのか部下として知る必要がある、ただそれだけの事。 「盗撮してまで欲しい平和島静雄の情報って、何かしら」 「……シズちゃんに、彼女がいるかっていう」 「は?」 そんな理由、自分で聞けば良いじゃない。 そう言い返せば、詰まったような苦しい表情を浮かべた。 --------- 本当はもっと気持ち悪くしたかったんだが…。 |